損害賠償請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 陸上自衛隊の陸曹候補生課程に入校し、共通教育中隊に配属中に自死した陸士長(当時22歳)の父母である控訴人らが、自死の原因は被控訴人A及び同Bによる指導の名を借りた暴力的・威圧的ないじめ・嫌がらせ行為にあると主張し、被控訴人A及び同Bに対しては民法709条に基づき、被控訴人国に対しては民法715条、国家賠償法1条又は安全配慮義務違反(債務不履行)に基づき、各4050万6811円等の連帯支払を求めた事案の控訴審である。原審は、国の安全配慮義務違反を認めたものの、自死との相当因果関係を否定し、各110万円の限度で認容していた。 【争点】 主な争点は、(1)被控訴人A及び同Bの行為の内容、(2)国の安全配慮義務違反の有無、(3)安全配慮義務違反と自死との相当因果関係の有無、(4)損害額、(5)過失相殺の可否である。特に、違法な指導により発症した適応障害ないし重症うつ病エピソードから自死に至ることの予見可能性が中心的争点となった。 【判旨】 控訴審は、争点(1)(2)について原審の判断を引用し、国の安全配慮義務違反を認定した上で、原審と異なり自死との相当因果関係を肯定した。精神障害の労災認定基準やDSM-Vにおいて適応障害が自死既遂の危険増加と関連する旨の記載があること、複数の医師が適応障害でも自死の危険性は高いとの意見を述べていること等を踏まえ、違法な指導により適応障害ないし重症うつ病エピソードを発病し自死に至ったことは予見可能な経過と評価した。適応障害から自死に至ることはまれとの反対意見については、自死を念頭においた治療措置を否定していないこと等から、認定を覆すに足りないとした。過失相殺については、本件学生にストレスへの脆弱性が通常想定される範囲を外れる程度にあったとは認められないとして否定した。損害額は、死亡慰謝料2500万円、逸失利益4347万8114円から遺族補償一時金725万4000円を控除し、弁護士費用各300万円を加え、各控訴人につき3361万2057円の支払を命じた。