国家賠償請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 防衛省情報本部に勤務する自衛官(3等陸佐)である原告が、平成27年9月に共産党の参議院議員が国会で統合幕僚長の訪米時会談概要文書を提示したことを契機として、陸上自衛隊中央警務隊から秘密漏えい罪(自衛隊法59条違反)の嫌疑をかけられ、ポリグラフ検査、自宅・実家・職場への捜索差押え、連日の取調べ等の捜査を受けたほか、上司によるパワーハラスメント及び業務変更・異動命令により精神的苦痛を被ったとして、国家賠償法1条1項に基づき慰謝料500万円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。原告は最終的に嫌疑不十分で不起訴処分となった。 【争点】 (1) 捜査全般の違法性(原告に対する秘密漏えい罪の嫌疑の存否及び「秘密」該当性)、(2) 個々の捜査行為(取調べ、ポリグラフ検査、自白強要、スマートフォンの実質的差押え、捜索差押え等)の違法性、(3) 業務変更及び異動命令の違法性、(4) 上司によるパワーハラスメントの有無、(5) 損害。 【判旨】 請求棄却。裁判所は、争点(1)について、原告使用端末のイベントログから、原告が統幕長訪米概要文書を加工して別ファイル名で保存・印刷した痕跡が認められ、印刷頁数が国会提示文書と同じ23頁であったこと、原告所有パソコンへのスキャナ接続履歴、「日本共産党 情報提供」等の検索履歴等から、原告に対する嫌疑には合理的理由があったと認定した。「秘密」該当性についても、非公表を前提とする国防に関する会談内容は実質秘に該当し、「取扱厳重注意」の表示は形式秘の要件も満たすとして肯定した。争点(2)の個々の捜査についても、ポリグラフ検査は承諾書に基づき適法、取調べも2時間程度で違法な長時間とはいえない等として、いずれも違法性を否定した。争点(3)の業務変更・異動についても、嫌疑がある原告を秘密情報から遠ざける判断にはやむを得ない面があり裁量権の逸脱はないとした。争点(4)のパワハラについては、上司が原告に肩を揉ませた事実は認めつつも不適切であったにとどまり、国賠法上違法と評価され慰謝料請求権が発生するほどの行為とは認められないとした。