AI概要
【事案の概要】 被告人は、令和4年10月25日午前6時48分頃、群馬県太田市のコンビニエンスストアにおいて、コーヒーSサイズを注文・精算したにもかかわらず、コーヒーマシンでカフェラテ約298ミリリットル(約2杯分の操作)を抽出して窃取した。被告人は店舗オーナーB(当時74歳)に発見され、逮捕を免れるため自動車に乗り込んで逃走を図った。Bが運転席側サイドミラー等にしがみついていることを認識しながら車両を発進させ、駐車場から公道に左折進行後、約222メートルにわたり最高時速約54キロメートルまで加速してBを路上に転倒させた。Bは入院加療約66日間を要する外傷性くも膜下出血、脳挫傷、右肩甲骨骨折等の重傷を負い、右肩関節部可動域制限の後遺症が残った。 【争点】 ①窃盗の故意・不法領得の意思の有無(弁護人はコーヒーマシンの操作を間違えただけと主張)、②殺意の有無(弁護人は公道走行時に被害者がしがみついていることを認識していなかったと主張)、③誤想防衛の成否(弁護人は被害者から殴られたと誤信し急迫不正の侵害があると誤信したと主張)、④心神耗弱の有無(エチゾラム依存症候群による影響)。 【判旨(量刑)】 裁判所は全争点について弁護人の主張を排斥した。①について、店員Cの信用できる証言により、被告人は令和4年5月頃から注文と異なる飲料を繰り返し抽出しており、当日もスムーズに操作して動揺した様子がなかったことから窃盗の故意を認定。②について、被害者の位置・姿勢からしがみついている状態が見えないはずがなく、公道に出た直後の急加速は被害者を振り落とすためと認定し、未必の殺意を肯定。③について、防犯カメラ映像上、被害者が被告人を殴打した事実はなく、被告人にも暴力を受けた反応が認められないとして誤想防衛を否定。④について、精神鑑定医の信用できる証言に基づき、エチゾラムによる酩酊は軽度で犯行への影響は軽微とし、完全責任能力を認定。量刑上、高齢者にしがみつかれた状態での高速走行は死亡の危険性が高く、被害結果も重大で動機も身勝手とする一方、事後強盗の類型で計画性がないこと、被害者に500万円を支払い処罰感情が和らいでいること、前科前歴がないことを考慮し、求刑懲役10年に対し懲役9年を言い渡した。