AI概要
【事案の概要】 平成26年9月27日に発生した御嶽山噴火により死傷した被害者及びその相続人ら(控訴人ら)が、国及び長野県に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めた事案の控訴審である。控訴人らは、①気象庁火山課の職員が噴火に先立ち火山性地震の増加等の前兆現象を観測していたにもかかわらず、噴火警戒レベルをレベル1からレベル2に引き上げなかったこと、②長野県が御嶽山山頂等に設置した地震計を故障したまま放置したことが、それぞれ職務上の注意義務違反に当たると主張した。原審は、国の注意義務違反は認めたものの因果関係を否定し、長野県の注意義務違反は否定して、請求をいずれも棄却した。 【争点】 ①気象庁火山課職員が噴火警戒レベルをレベル2に引き上げなかった判断に職務上の注意義務違反(裁量の逸脱・濫用)があるか、②長野県の地震計維持管理に関する注意義務違反の有無。 【判旨】 控訴棄却。東京高裁は、噴火警戒レベルの引上げは気象庁の専門技術的な裁量に委ねられており、その判断が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠く場合に限り違法と評価されるとの判断枠組みを示した。その上で、①判定基準の欄外に「これらの基準は目安とし、上記以外の観測データ等も踏まえ総合的に判断する」と記載されていることから、本件列挙事由の存在が一義的にレベル2への引上げを求めるものとは解せないこと、②火山性地震の回数が過去の噴火事例と比較して多くなかったこと、③低周波地震の発生回数が少なく火山性微動も観測されていなかったこと、④推移モデルでは噴火に至らない場合も多く予見可能性があったとはいえないこと、⑤山体膨張の可能性は事後的検討でも断定できなかったこと等を総合し、気象庁職員の判断は著しく合理性を欠くとは認められないとした。長野県についても、地震計の維持管理に関する職務上の注意義務を登山者に対して負っていたとは認められないとした。