AI概要
【事案の概要】 被告人は、同居する実母A(当時83歳)と長年にわたり2人で生活していたところ、Aが妄想性障害の疑いにより、被告人が誰かに自分を尾行させている等と言って被告人を非難することを繰り返していた。被告人はシゾイドパーソナリティ症を有しており、ストレスを蓄積しやすい状態にあった。令和5年6月20日、Aが被告人に対しスリッパが汚れたなどと言い掛かりをつけたことに立腹し、Aを殺害して言い掛かりをつけられる状況を終わらせようと考え、同日午後9時40分頃、自宅において、Aの頭部を踏みつけるなどして抵抗できない状態にした上、包丁(刃体約14.6cm)でAの左胸部を1回突き刺し、心損傷により死亡させた殺人既遂の事案である。 【判旨(量刑)】 裁判所は、同種事案(刃物を用いた親族間殺人既遂、前科なし)の量刑分布が概ね懲役6年ないし16年(中間値9年)であることを前提に検討した。犯行は計画性こそないものの、抵抗できない被害者に対し、肋骨を貫通し心臓に達するほどの強い力で包丁を突き刺しており、殺意は強固で確定的であると認定した。被害者の妄想的言動や行政の福祉的支援の途絶といった経緯に同情の余地はあるが、被害者に殺害されるほどの落ち度はなく、シゾイドパーソナリティ症も殺害の意思決定自体に直接的影響を与えていないとして、刑を大きく減じる事情とまではいえないとした。犯情は同種事案の中程度の中でやや重い部類に属すると位置付けた。一般情状として、被告人が事実を認め反省の言葉を述べていること、犯行翌日に自首したこと、社会福祉士が更生支援計画を策定したことなどを被告人に有利な事情として考慮した。以上を総合し、求刑懲役14年、弁護人の意見懲役6年に対し、懲役10年(未決勾留日数250日算入)を言い渡した。