損害賠償請求事件(甲事件)、特許権移転登録手続請求事件(乙事件)
判決データ
AI概要
【事案の概要】 医療法人再生未来(原告)が公益財団法人神戸医療産業都市推進機構(被告)に対し、活性型GcMAF(マクロファージ活性化因子)の合成方法に関する研究受託契約に基づき、(1)協議義務違反及び守秘義務違反を理由とする損害賠償2000万円(甲事件)、(2)原告代表者P1及び徳島大学教授P2が共同発明者であることを前提とする特許権持分の移転登録手続(乙事件)を求めた事案である。被告の研究者P3は、従来の2ステップ法(培養細胞でタンパク質を合成後、酵素処理で活性化)とは異なり、酵素処理を経ずに直接活性型GcMAFを合成する画期的な1ステップ法を発見し、被告単独名義で特許出願・登録した。 【争点】 (1)1ステップ法の発明が研究受託契約の対象に含まれるか、(2)被告に契約上の協議義務違反・守秘義務違反があったか、(3)P1・P2が共同発明者であるか、(4)P2の特許を受ける権利の放棄の有無、(5)契約に基づく特許権移転請求の可否。 【判旨】 裁判所は、原告らの請求をいずれも棄却した。争点(1)について、1ステップ法の発明は本件契約の規範が及ぶ対象であると認めた。しかし争点(2)について、P3は発明の経緯をP1に十分開示し、特許出願の可否を打診した上で、P1が弁理士に相談の上特許化を諦める意向を示したものであり、協議義務は尽くされたと判断した。守秘義務違反についても、特許出願は当事者間で当然予想されたものであり、契約上の守秘義務の範囲外であるとした。争点(3)について、P1は課題提供にとどまりスポンサー的役割であったとして共同発明者性を否定した一方、P2についてはマクロファージ貪食活性化能試験やビタミンDアフィニティカラムの合成等の実質的関与を認め共同発明者と認定した。もっとも争点(4)について、P2はP3の単独出願に同意し特許を受ける権利を放棄したと認定した。さらに、契約14条2項に基づく移転登録請求についても、原告が相当対価を支払う意思がなく無償譲渡を求めるものにほかならないとして退けた。