AI概要
【事案の概要】 大手電気通信事業者の携帯電話販売店で副店長として勤務していた被告人が、実行犯及び氏名不詳者と共謀の上、他人名義の運転免許証を持参したなりすまし役を本人であるかのように装わせ、店舗のタブレット端末からサーバに虚偽の情報を入力し、SIMカード合計10枚の通信サービス契約を不正に締結して財産上不法の利益を得たとして、電子計算機使用詐欺罪で起訴された事案。被告人はなりすましの認識及び共謀を否認した。 【争点】 (1) 被告人が名義人①の契約手続きを実際に担当したか(争点1)。 (2) 被告人が実行犯らと共謀し、なりすましと認識しながら虚偽の情報を電子計算機に入力したか(争点2)。 【判旨(無罪)】 裁判所は、以下の理由から被告人の故意及び共謀を認定するには合理的な疑いが残るとして、無罪を言い渡した。 第一に、契約時の状況について、名義人となりすまし役はいずれも外国人であり、運転免許証の写真との照合で別人と見抜けたかは定かでない。むしろ、共謀していたのであれば、わざわざ報酬を支払って性別を揃えたなりすまし役を用意する必要はなく、この点は被告人の弁解と整合的である。 第二に、被告人が二者チェックの省略、在留カード未確認、他人名義口座の登録など社内ルールに違反した手続きをしていたことは認められるが、当時は営業目標の高さから不正契約が横行しており、被告人も営業成績のために社内ルールを遵守しなかっただけである可能性は否定できない。 第三に、指示役と被告人の関係について、指示役は実行犯らに対してさえ被告人が「なりすましと知って協力している」とは明言しておらず、伝聞供述の正確性にも疑義がある。金銭授受の疑いについても、社内ルール違反の便宜に対する心付け程度とも解し得る。 第四に、被告人が事件後に「捕まるかも」と発言した点は、別件の名義人からの問合せを契機としたものと矛盾せず、事件以前からの犯罪認識の根拠としては不十分である。 以上を総合し、被告人がなりすましを認識・認容していなくても、共謀がなくても説明可能であるとして、刑訴法336条により無罪を宣告した(求刑:懲役2年6月)。