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【事案の概要】 本件は、「貴醸酒」の文字からなる商標(登録第1980784号、指定商品:第33類「清酒」)について、原告(株式会社JFIT-Link)が商標法3条1項1号〜3号違反及び同法4条1項6号違反を理由に無効審判を請求したところ、特許庁が3条1項各号違反の請求を除斥期間経過により却下し、4条1項6号該当性も否定して請求不成立とした審決に対し、原告がその取消しを求めた審決取消訴訟である。「貴醸酒」は、国税庁醸造試験所が仕込水の代わりに清酒を用いる製法を開発し、開発チームのA博士が命名したものであり、被告(榎酒造)を含む酒造会社等が貴醸酒協会を設立して製造販売を行ってきた。 【争点】 (1) 審判手続における手続違背の有無(答弁書副本受領から審理終結通知までの期間が短く、反論の機会が与えられなかったか) (2) 本件商標の商標法4条1項6号該当性(「貴醸酒」が国等の公益事業を表示する標章として著名であったか) 【判旨】 裁判所は、原告の請求を棄却した。 取消事由1(手続違背)について、審判合議体には審理の熟否について裁量権があり、原告の防禦権を不当に制限する事情は認められないとして、裁量権の逸脱はないと判断した。 取消事由2(4条1項6号該当性)について、「貴醸酒」が国税庁醸造試験所で開発され同所の博士により命名されたことは認められるものの、清酒の名称が当然に事業の名称となるものではなく、実際に製造販売してきたのは被告ら酒造会社等であると認定した。開発者自身の論文にも「貴醸酒という名称は登録商標であり、一般名ではない」と記載されており、醸造試験所自身が公益事業の表示として認識していなかったことは明らかであるとした。したがって、本件商標は同号に該当しないと結論づけた。 なお、原告が主張した商標法4条1項16号違反及び同法29条該当の点は、無効審判手続で審理判断されていないため審決取消訴訟の対象とならないとした。