AI概要
【事案の概要】 ギリシャ共和国(原告)が、日本酪農協同株式会社(被告)を商標権者とする登録商標「至福のギリシャ」(標準文字、第29類「ギリシャ国の伝統製法によるヨーグルト」)について、商標登録無効審判を請求したところ、特許庁が請求不成立の審決をしたため、その取消しを求めた事案である。原告は、本件商標が①商標法3条1項3号(産地等の記述的表示)、②同法4条1項16号(品質誤認)、③同法3条1項柱書(使用意思の欠如)、④同法4条1項7号(公序良俗違反・国際信義違反)に該当し、⑤審判手続に瑕疵があると主張した。 【争点】 (1) 本件商標「至福のギリシャ」が商品の産地・販売地を普通に表示する標章のみからなる商標に該当するか (2) 本件商標が商品の品質誤認を生ずるおそれがあるか (3) 被告に本件指定商品への使用意思があるか (4) 本件商標の登録が公序良俗や国際信義に反するか (5) 審判手続に違法な瑕疵があるか 【判旨】 請求棄却。裁判所は全ての取消事由を排斥した。争点(1)について、「至福の」という肯定的な形容語と「ギリシャ」の結合により、全体として「この上もない幸せの国ギリシャ」という一つのまとまりある意味を理解させるものであり、産地・販売地を記述的に表示したものではなく、ギリシャと何らかの関連がある商品であることを表示するにとどまると判断した。争点(2)について、本件アンケートの結果を詳細に検討し、産地をギリシャと回答した者は38.1%にとどまり日本(28.3%)やわからない(34.7%)も相当数あること、最も多く想起される属性は味の「濃厚」さであること、ギリシャ産ヨーグルトの国内流通量が極めて限定的であること等から、品質誤認のおそれを否定した。争点(3)について、被告の特許明細書に「ギリシャで伝統的に作られているギリシャヨーグルト」への言及があり、将来的に製造販売する蓋然性と使用意思を認めた。争点(4)について、「至福の」という肯定的修飾語を伴う商標はギリシャ国を侮辱するものではなく、地理的表示に関する国際的趨勢や英国判例も本件と事案を異にすると判断した。争点(5)について、辞書的意味の職権証拠調べは不意打ちに当たらず、書面審理の採用も審判長の裁量範囲内であるとした。