建造物侵入、現住建造物等放火、窃盗
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、かつて勤務していた高知県土佐清水市所在のホテルにおいて、同僚女性との不倫関係が支配人Bらに知られて以降、冷たい態度を取られるようになったと感じて不満を募らせていた。令和5年10月に同僚と揉めたことをきっかけにホテルを退職したが、新たな仕事が見つからず同年11月中旬頃には所持金を使い果たしたことから、現金を手に入れるとともにBらに仕返しをしようと考えた。被告人は、同年11月20日午前1時頃、ホテルに無施錠の正面出入口から侵入し、フロントのレジから現金合計約9万879円を窃取した(第1)。その直後、再びホテルに侵入し、3階客室303号室の押入内に置かれていた布団にライターで点火して放火し、ホテルの一部(焼損面積合計約5.791平方メートル)を焼損した(第2)。犯行当時、ホテル内には宿泊客36名及び従業員1名の合計37名が滞在していた。 【判旨(量刑)】 裁判所は、量刑判断の中心となる現住建造物等放火について、同種事案(単独犯・燃料等不使用・怨恨等目的・前科なし)と比較して犯情を検討した。動機について、Bらの態度には理由がないとはいえないが、無関係の宿泊客ら多数の生命・身体等を危険にさらすことを正当化する事情とはなり得ず、同情できる点は少ないとした。犯行態様について、深夜午前1時過ぎという就寝者も多く発見が遅れやすい時間帯に37名が滞在するホテルで放火しており、多数の生命・身体等を危険にさらす相当に危険なものであったとして、同種事案の中でも重い部類に属するとした。結果については、早期の消火活動により焼損面積は比較的僅少にとどまったものの、宿泊客らに与えた恐怖感は大きく、改修工事費等約1305万円の損害が生じ、火災保険で賄われない約214万円について被告人は何ら被害弁償をしていない。窃盗についても、元従業員としての知識を悪用した態様の悪さを指摘した。一般情状として、被害金の一部還付、被告人の反省態度、母親の支援誓約を考慮した。同種事案の量刑分布は懲役3年から7年(中間4年)であるところ、犯情の重さを踏まえ、被告人を懲役6年に処した(求刑懲役8年)。