AI概要
【事案の概要】 警察署の刑事課に所属していた警察官D(当時24歳)が自殺したことについて、その相続人である原告ら(母、兄、妹)が、自殺は刑事課における過重な業務により精神障害を発病したことが原因であると主張し、被告(地方公共団体)に対し、主位的に国家賠償法1条1項に基づき、予備的に民法415条(安全配慮義務違反)に基づき、合計約7800万円の損害賠償を求めた事案である。亡Dは平成29年3月に刑事課に配属された後、強行犯捜査等に従事し、当直勤務を含む時間外労働時間数が月100時間を大幅に超える状態が継続していた。 【争点】 ①本件自殺と業務の因果関係(亡Dの精神障害の発病の有無・時期、業務の過重性)、②被告の注意義務違反・過失の有無(予見可能性、安全配慮義務の内容)、③損害の有無及び額(過失相殺・素因減額の可否を含む)。 【判旨】 裁判所は、原告らの請求を大部分認容した(原告Aに約4034万円、原告B及びCに各約1073万円)。争点①について、交際相手へのメッセージ内容や憔悴した様子等から、亡Dは遅くとも8月末までにうつ病エピソードを発病したと認定した。被告は自殺直前の合コン参加がうつ病と矛盾すると主張したが、軽症・中等症のうつ病患者は周囲に不調を気取られないよう振る舞うとの医学的知見を踏まえ、矛盾しないと判断した。当直勤務の時間について、休憩1時間を除き全て時間外労働に当たると認め、当直を含む時間外労働時間数(月149〜185時間)を基礎として、認定基準⑤に該当する過重な業務であったと認定した。争点②について、長時間労働により心身の健康を損なうおそれがあることは周知であり、予見可能性は業務の過重性の認識で足りるとして、被告の注意義務違反を認めた。争点③について、過失相殺・素因減額の主張を排斥し、死亡逸失利益約4840万円、死亡慰謝料2000万円等を認定した上で、遺族補償一時金等を損益相殺した。