殺人未遂、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、令和5年11月27日、徳島県阿南市の集合住宅廊下において、友人関係にあった被害者(当時57歳)に対し、フルーツナイフ(刃体の長さ約8.7cm)で左顔面付近を切り付け、さらに左臀部等を突き刺すなどした殺人未遂及び銃刀法違反の事案である。被告人と被害者は7年来の友人であったが、被告人が被害者方の玄関ドアをへこませたことなどから関係が悪化していた。犯行当日、被害者が被告人の出入りを禁止し、被告人の飼い犬の返還も拒否したことに激高した被告人が、自宅からフルーツナイフを持ち出して被害者方へ向かい犯行に及んだ。被害者は大腿深動脈等からの大量出血により一時心肺停止となったが、救急医療により一命を取り留めた。 【争点】 主たる争点は殺意の有無及び程度である。弁護人は、被告人がフルーツナイフを被害者に当たらないよう振ったところ、被害者が近づいたため意図せず当たった可能性を主張した。被告人自身も、臀部への刺突について、四つん這いの状態でナイフを突き出したところ、被害者がごみ袋からずり落ちたために深く刺さったと供述した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、顔面付近の切創が下顎骨の骨膜に達し頸部まで及ぶ約16.5cmの深い傷であったこと、頸動脈まで約2cmの位置であったこと、目撃者に制止されても躊躇なく臀部を2回刺す追撃を行ったこと、犯行後に救急車を呼ばず立ち去ったことなどから、被告人には未必の殺意があったと認定した。一方、殊更に急所を狙っておらず、追撃可能な状況で凶器を捨て、救急車を呼ぶよう言い残して帰宅したことから、確定的殺意は否定した。被告人の供述については、現場にごみ袋が確認されないなど客観的状況と整合しないとして信用性を否定した。量刑においては、犯行態様が執拗かつ危険で悪質であること、被害者が一時心肺停止に至り顔面に後遺症が残る重大な被害が生じたこと、同種前科7犯(うち6回服役)があり前刑仮釈放後わずか1年余りでの再犯であることを重視し、求刑懲役10年に対し、懲役8年6月を言い渡した。