AI概要
【事案の概要】 浜松市が開設し被告(公益財団法人)が指定管理者として管理する総合病院(地域周産期母子医療センター)において、初産の原告母(出産時41歳)が妊娠39週3日で前期破水により入院し、陣痛促進剤(オキシトシン)投与のもと経腟分娩を試みたところ、原告子が重症新生児仮死の状態(アプガースコア0点)で出生し、重度脳性麻痺等の後遺障害が残った。原告子並びにその父母が、被告病院の医師及び助産師には、陣痛促進剤の投与・中止判断の過失、適切な分娩監視及び緊急帝王切開を怠った過失等があるとして、診療契約上の債務不履行又は不法行為に基づき、原告子につき約2億4112万円、原告父母につき各500万円の損害賠償を請求した事案である。 【争点】 (1) 胎児心拍数モニタリング(CTG)上の波形レベルの評価、(2) オキシトシン投与中止義務違反の有無、(3) GBS感染に対する血液検査・抗生剤投与義務違反の有無、(4) 緊急帝王切開の不実施に関する注意義務違反の有無、(5) 各注意義務違反と後遺障害との間の相当因果関係、(6) 損害額が争点となった。 【判旨】 裁判所は、CTG上、分娩当日の午前4時43分頃からレベル3(軽度異常)ないしレベル4(中等度異常)の異常波形がほぼ間断なく出現し、午前7時30分頃からはレベル4の出現頻度が高まっていたと認定した。加えて、前期破水による羊水減少で臍帯圧迫のリスクがあったこと、母体の発熱から子宮内感染(絨毛膜羊膜炎)の可能性を否定できなかったこと、分娩進行が遅く早期の経腟分娩が望めなかったことを総合考慮し、遅くとも午前11時45分頃の時点で、オキシトシン投与を中止した上で緊急帝王切開による急速遂娩の準備・実施をすべき注意義務があったと判断した。被告病院の医師らがこれを怠り、結果として原告子が約4時間以上長く低酸素状態に置かれたことと重篤な後遺障害との間に相当因果関係を認めた。被告が主張したGBS感染による髄膜炎が後遺障害の原因であるとの反論については、髄膜炎発症を裏付ける証拠がないとして退けた。原告子に約1億9478万円、原告父母に各200万円の損害賠償を認容した。