仮処分命令申立事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 債権者(サムスン バイオエピス社・韓国法人)は、債務者(リジェネロン社・米国法人)が保有する加齢黄斑変性症の治療に関する2件の特許権(VEGF阻害剤の遺伝子変異型に基づく使用に関する発明)について、債務者が厚生労働省及びPMDAに対し、債権者のバイオ後続品(アフリベルセプトBS硝子体内注射液)の製造販売が当該特許権を侵害する旨を告知した行為が、不正競争防止法2条1項21号の不正競争(信用毀損行為)に当たるとして、同法3条1項に基づき告知の差止めを求める仮処分を申し立てた事案である。債権者は当初「中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性」を含む効能で承認申請したが、最終的にこれを除外して3つの効能について承認を得ていた。 【争点】 主な争点は、パテントリンケージ制度の下で先発医薬品に係る特許権者が厚労省等に対して後発医薬品の製造販売が特許権を侵害する旨の情報提供を行うことが、正当な行為として違法性が阻却されるかである。 【判旨】 申立て却下。裁判所は、パテントリンケージ制度に基づく医薬品特許情報の提供は、厚生労働大臣が承認の可否に係る判断権限を適切に行使するために多面的な意見を聴取する目的で求められているものであるから、特許権者には種々の意見をある程度自由に述べる機会が確保される必要があるとした。そのうえで、形式的に不正競争に該当し得る場合でも、パテントリンケージ制度の趣旨に照らして相当性を有するときは正当な行為として違法性を欠くとの判断枠組みを示した。相当性の判断においては、特許権者が非侵害を知りながらあえて侵害意見を述べたか、殊更に信用を害する事実を述べたか、内容・態様が社会通念上必要かつ適切な範囲内か等を考慮すべきとした。本件では、債務者の情報提供は制度の一環として行われ、具体的な事実的・法律的根拠に基づく検討がなされており、相当性を否定すべき事情は認められないとして、違法性が阻却されると判断した。