AI概要
【事案の概要】 オリンパス株式会社の株主である原告及び参加人が、同社の会計監査人であった被告(有限責任監査法人)に対し、会社法423条1項に基づく損害賠償を求めた株主代表訴訟である。オリンパスは、金融商品の多額の含み損(約950億円)の計上を回避するため、簿外のファンド等に資金を供給して含み損を抱えた金融商品を簿価で買い取らせる「損失分離スキーム」を構築し、さらに国内3社の株式の高値買取りやジャイラス買収に伴うFA報酬の支払を通じて損失を解消する「損失解消スキーム」を実行した。原告らは、被告がこれらのスキームに起因する有価証券報告書等の虚偽記載を看過したとして、総額約2196億円の損害賠償を請求した。 【争点】 (1) 金融商品の時価に関する情報の確認義務違反の有無、(2) 残高情報の調査義務違反の有無、(3) 国内3社株式取得についての調査義務違反の有無、(4) 監査報告書に適切な意見表明を付す義務違反の有無、(5) 後任監査人への引継義務違反の有無、(6) 違法配当等及び虚偽記載の阻止義務等の違反の有無。 【判旨】 請求棄却。裁判所は、会計監査人の善管注意義務違反の有無は、監査基準等が定めるリスク・アプローチに基づき監査手続が実施されたか否かの観点から判断すべきとした上で、全争点について被告の善管注意義務違反を否定した。争点(1)につき、被告は平成11年の「飛ばし」発覚後、特金口座の全解約や含み損の表面化等の対応策を講じて虚偽記載の危険を大幅に低減させており、独自に専門家に依頼して時価情報を確認する義務まではなかったとした。争点(2)につき、残高確認状に担保設定の有無が記載されていなくても、当時の監査基準上、預金先に担保の有無を直接確認すべき義務があったとは認められないとした。争点(3)~(4)につき、被告は国内3社やジャイラス買収関連の取引について相応の監査手続を実施しており、損失分離スキームは巧妙に隠蔽されていたことも考慮すると、義務違反は認められないとした。争点(5)につき、後任監査人への引継ぎも監査基準に照らし十分であったとした。争点(6)につき、監査人が無限定適正意見を付したことをもって違法配当等を行ったとはいえないとした。