業務委託料、同反訴請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被控訴人(個人)は、控訴人(株式会社シンギー)との間で営業代行に関する業務委託契約(本件契約)を締結し、控訴人の顧客に対する商談やクロージング等の営業業務を行っていた。被控訴人は控訴人の営業部長として、顧客である株式会社dr365に対し、美容液「V.C.プレエッセンス」の化粧品トータルプロデュース業務(成分・配合率の確定、容器やデザインの選定等)を担当していた。本訴は、被控訴人が控訴人に対し、令和4年1月分から5月分の業務委託報酬及び遅延損害金の支払を求めた事案である。反訴は、控訴人が被控訴人に対し、被控訴人が本件商品に含まれるグリシルグリシンが資生堂の特許権(毛穴縮小剤に関する特許)を侵害する可能性について顧客から問い合わせを受けた際に「特に問題はない」と不適切な回答をしたことにより、控訴人がdr365に対する使用者責任として約887万円の損害賠償義務を負ったとして、民法715条3項の求償権等に基づき約1086万円の支払を求めた事案である。原審は本訴請求のうち183万1500円及び遅延損害金を認容し、反訴請求を棄却したため、控訴人が控訴した。控訴審では債務不履行に基づく予備的請求が追加された。 【争点】 1. 被控訴人がdr365からの特許権侵害に関する問い合わせに対し「特に問題はない」と回答したことが不法行為を構成するか 2. 本件商品が資生堂の特許権を侵害するものであったか 3. 控訴人の民法715条3項に基づく求償権の成否 4. 本件商品の1回使用量の設定不備に関する不法行為の成否 5. 被控訴人の債務不履行の成否(当審追加の予備的主張) 【判旨】 知的財産高等裁判所は、控訴を棄却し、当審で追加された請求も棄却した。まず、本件商品が本件特許を侵害するか否かについて、控訴人は弁護士らを交えて検討したとしながら具体的な立証を行っておらず、控訴人及びdr365は令和4年1月頃以降も本件商品の宣伝・販売を継続し、同年6月の資生堂からの警告後にようやく販売停止に転じたことから、特許権侵害を厳に避けようとしていたとは認められないとした。被控訴人の不法行為については、本件契約上の業務は営業業務であり、特許権に関する調査は含まれておらず、控訴人自身が特許権侵害の可能性を認識しながらも販売を継続していた態度からすれば、被控訴人に特許権侵害の調査義務が課されていたとは認められないと判断した。求償権についても、被控訴人の対応によりdr365に損害を与えたとは認められず、求償権の内訳についてもアットコスメキャンセル料や余剰在庫買取分等は特許侵害の認識後も販売を継続したことによるもので被控訴人の行為に起因するとは言い難いとした。債務不履行の予備的主張についても、被控訴人は150件もの営業案件を担当しており、業務に含まれない特許権調査の義務はなく、控訴人こそがOEM商品供給に際し必要な調査体制を整えるべきであったとして、いずれの主張も退けた。