商標移転登録抹消登録等請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 老舗和洋菓子「千鳥屋」の創業家一族が展開する事業に関し、民事再生手続を経た旧千鳥屋総本家の事業譲受会社(一審原告)が、創業家の孫であるP1に対し商標権(「千鳥屋」)を1円で譲渡する契約と、P1が一審原告に無償で専用使用権を設定する契約を同日に締結した。しかしP1は専用使用権の設定登録をしないまま、商標権の一部をP2及び千鳥饅頭総本舗に移転登録した。一審原告は、P1に対し専用使用権設定登録手続又は債務不履行に基づく7000万円の損害賠償を、P2及び総本舗に対し一部移転登録の抹消登録手続を求めた。原審は全請求を棄却し、一審原告が控訴した。 【争点】 ①商標権譲渡契約の錯誤無効の成否、②専用使用権設定契約の成立及び共通錯誤による無効の成否、③一審原告による商標権一部移転の事後承諾の有無、④譲渡禁止特約違反による一部移転登録の無効の成否、⑤P1の債務不履行の成否及び損害額。 【判旨】 控訴一部認容(100万円の損害賠償のみ認容)。①について、P1が契約締結時に専用使用権設定義務を履行しない意思であったとしても、契約により債務を負った以上履行不能ではなく、錯誤は認められない。②について、P1は契約書に自ら押印しており専用使用権設定契約は成立している。一審原告は創業家と無関係であり自己の利益を追求する立場にあったから、専用使用権を設定されないことを了解していたとは認められず、共通錯誤も否定。③について、一審原告は一部移転登録を知った後に抗議しており、事後承諾は認められない。④について、譲渡禁止特約は債権的効力にすぎず、違反しても移転登録自体は無効とならない。⑤について、P1の債務不履行を認定。損害額については、専用使用権がなくとも先使用権者の使用を容認せざるを得ず独占的利益はなかった一方、対宗家事業譲渡において専用使用権が譲渡対象財産に含まれていた事情等を考慮し、民訴法248条により100万円と認定した。