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【事案の概要】 被告人(当時現職の長野県議会議員)は、令和3年9月29日未明、長野県塩尻市の自宅において、妻である被害者(当時47歳)の頸部を何らかの方法で圧迫し、窒息により殺害したとして殺人罪に問われた事案である。被告人は当時、長野県議会定例会の会期中で議員会館に滞在していたが、検察官は、被告人が深夜に議員会館から自宅まで自家用車で往復し犯行に及んだと主張した。 【争点】 本件の争点は、被告人が犯人であるか否かである。弁護人は、被告人は犯行時間帯に議員会館に滞在しており、犯行は物盗り目的の外部侵入者によるものであると主張した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、以下の間接事実を総合的に検討し、被告人を犯人と認定した。第一に、議員会館付近から現場付近にかけて設置された複数の防犯カメラに、被告人車両である可能性が高い車両又は同車種の車両が、被告人の往復移動と符合する時刻・地点・方向で走行していた。第二に、現場の状況(物色痕がほぼなく整然としていたこと、事務所内の金庫の保管場所を知る者の犯行であること、被害者が犯人に対し違和感なく対面した形跡があること等)から、物盗り犯の可能性は否定され、犯人が物盗りに見せかける偽装工作をした被害者に近い人物と認められた。第三に、犯人が残した土足痕は、被告人がかつて使用していたテニスシューズと同一の底面デザインの靴によるものであった。第四に、被告人は一般質問の原稿作成を装うアリバイ工作を行っていたと認められた。第五に、被告人は不倫相手との復縁を強く望み、離婚も現実的でない状況にあり、犯行動機が認められた。これらの事実関係が時間的にも整合し、被告人が犯人でないとすれば合理的に説明できない事態であるとして、有罪を認定した。 量刑については、身勝手な動機に基づく冷酷かつ凶悪な犯行であること、県議会での一般質問を利用したアリバイ工作に計画性が認められること、犯行後間もなく不倫相手に復縁を求めるなど反省がうかがえないことから、求刑懲役20年に対し、懲役19年を言い渡した。