遺族補償給付等不支給処分取消請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 土地改良区の職員であったA(当時24歳)が、上司等から人格や人間性を否定する言動を繰り返し受けたことにより精神障害(うつ病)を発病して自死したとして、Aの父である原告が、労災保険法に基づく遺族補償給付及び葬祭料の不支給処分の取消しを求めた事案である。Aは大学卒業後ホテル勤務を経て平成31年2月に土地改良区に転職したが、採用後わずか2か月で休職に至り、その後自死した。 【争点】 Aの精神障害の発病及び死亡が業務に起因するものと認められるか。具体的には、①精神障害の発病時期、②上司等の言動が人格・人間性を否定する精神的攻撃に当たるか、③その心理的負荷の強度が「強」といえるかが争われた。 【判旨】 裁判所は、原告の請求をいずれも認容し、不支給処分を取り消した。 まず発病時期について、Aが平成31年4月2日に早退するまで就業を続けていたこと、翌3日の受診時の検査結果等を踏まえ、同年4月3日頃の発病と認定した。 業務起因性については、録音データ等の客観的証拠に基づき、上司等の言動を詳細に検討した。①備品リストの完成状況に関する矛盾を「破綻」「事件もの」と嘲笑・揶揄しながら追及したこと、②一般常識の不足を繰り返し指摘し、「うそという民族衣装をまとってる」等と非難した上、業務時間中に書店へ連れ出して小学生向け参考書を買い与えるという屈辱的な対応をしたこと、③来客への挨拶を忘れたことについて「ズボンをはかずに来た」等の屈辱的表現で執拗に問いただし「なめんなよ」と威迫したことなどを認定した。 これらの言動は、採用後から休職直前まで反復・継続しており、人格や人間性を否定する業務上明らかに必要性がない又は業務目的を大きく逸脱した精神的攻撃に当たると判断し、心理的負荷の強度は「強」と認めた。また、Aが自死前に作成した遺書の内容も上記認定事実と整合するとして、業務起因性を肯定した。