特許取消決定取消請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告(大日本印刷株式会社)は、「ポリエステル樹脂組成物の積層体」に関する特許(特許第6547817号)を有していたところ、特許庁が特許異議申立てに基づき全請求項(訂正後28項)について特許取消決定をしたため、その取消しを求めた事案である。本件特許は、バイオマス由来のエチレングリコールを用いたポリエステルを含む第1の層と、化石燃料由来の原料のみからなる第2の層を有する積層体に関するものである。特許庁は、引用文献4を主引用例とする進歩性欠如(取消理由1)及び引用文献7を主引用例とする進歩性欠如(取消理由2)を理由に取消決定をした。なお、先行する第1次取消決定は前訴判決により取り消されており、本件は差戻し後の再度の異議手続における決定に対する訴えである。 【争点】 (1) 引用文献7を主引用例とする本件発明の進歩性判断の誤りの有無(取消事由2) (2) 手続違背の有無(取消事由3) 主に、バイオマス由来PETの不純物による透明性・成型性・耐熱性・ガスバリア性への悪影響を理由とする阻害要因の有無、及び引用発明への適用の動機付けの有無が争われた。 【判旨】 請求棄却。裁判所は、まず全請求項を対象とする取消理由2から判断した。引用文献7に基づく引用発明Bの認定に誤りはなく、引用文献5にはバイオマス由来PETが化石資源由来PETと遜色ない性能を有しフィルム等に使用できる旨の記載があることから、環境負荷低減という一般的課題の解決のために引用発明Bに引用文献5記載事項を適用する動機付けがあるとした。原告主張の阻害要因(不純物による透明性低下等)については、精製処理による純度向上や濾過工程による色調改善等の方法が原出願日前の文献に記載されており、当業者が適宜対処しうる範囲のものであるとして排斥した。手続違背の主張についても、特許法120条の5第1項は2回の取消理由通知を要求するものではないとして退けた。以上から、取消事由1について判断するまでもなく、本件決定に違法はないと結論づけた。