AI概要
【事案の概要】 頭痛と吐き気を訴えて被告が設置する病院(彦根市立病院)の救急外来を2度にわたり受診した77歳の女性(亡C)が、2度目の受診後に帰宅した翌日、意識障害を起こして慢性硬膜下血腫及び脳梗塞と診断され、緊急手術を受けたものの高度意識障害・四肢麻痺の後遺障害が残った事案である。亡Cの相続人である原告ら(夫と長男)が、診療にあたった医師らには遅くとも2度目の診察終了時までにCT検査を実施して脳神経外科医に相談すべき注意義務があったのにこれを怠ったと主張し、被告に対し不法行為に基づく損害賠償合計約5825万円を請求した。なお、亡Cはワーファリン(抗凝固薬)を服用しており、深部静脈血栓症・高血圧の既往があった。 【争点】 主な争点は、①被告医師らに4月30日午前9時頃までにCT検査を実施して脳神経外科医に相談すべき注意義務があったか、②注意義務違反と後遺障害との因果関係、③損害額である。被告は、神経学的所見に問題がなく一次性頭痛を疑うのが自然であり、くも膜下出血が疑われない以上CT検査の義務はなかったと反論した。 【判旨】 裁判所は、被告医師らの注意義務違反を認め、原告Aに約2575万円、原告Bに約2465万円の損害賠償を命じた。まず注意義務について、1回目の診察でD医師自身がカルテに「頭痛レッドフラッグ」と記載し、突然ピークとなる頭痛・今まで経験したことのない頭痛・50歳以上で初発等の複数項目に該当することを認識していたこと、2回目の診察でE医師も、2日前に救急受診した患者が再び救急搬送され、全身脱力感・体動困難・高血圧(普段130mmHgが168mmHg)・ワーファリン服用という状況を認識していたにもかかわらず、いずれもCT検査を実施しなかった点を問題とした。二次性頭痛の原因はくも膜下出血に限られず、神経学的所見が乏しくても二次性頭痛は否定できないとして、被告の反論を退けた。因果関係については、4月30日時点ではまだ脳ヘルニアに至っておらず、CT検査を実施すれば両側性慢性硬膜下血腫が判明し、ワーファリン服用者で凝固障害がある状況下では緊急手術が行われた蓋然性が高く、70代の慢性硬膜下血腫患者の約79.6%が退院時に機能回復良好であったとの統計を踏まえ、後遺障害を回避できた高度の蓋然性があると認定した。