AI概要
【事案の概要】 原告は、障害児向けの放課後等デイサービス(マーブル)及び個別支援塾(ゆうがく)を運営する株式会社である。被告らは原告の元従業員であり、被告P1は支援スタッフ(校舎運営担当)、被告P2は児童発達支援管理責任者として勤務していた。被告らは在職中の令和4年7月に共同で発達障害専門塾「INNOVATION」のウェブサイトを開設し、同年8月1日に被告事業を開始した。原告は、被告らに対し、就業規則上の競業避止義務違反、信義則上の義務違反、引継ぎ義務の懈怠、テキスト等の横領・廃棄、営業秘密の不正使用等を理由に、合計約1172万円の損害賠償及び差止め等を請求した。 【争点】 (1) 就業規則の競業禁止規定(退職後6か月間、原告から半径2キロ以内での競業禁止)が被告らに適用されるか。(2) 被告らが社会通念上相当性を欠く態様で競業を行ったか(信義則上の義務違反)。(3) 退職時の引継ぎ義務違反の有無。(4) テキスト販売代金の領得や書籍廃棄の有無。(5) 児童情報(営業秘密)の不正持出し・使用の有無。(6) 原告の損害額。 【判旨】 裁判所は、競業禁止規定について、「当法人から半径2キロ以内」との定めは約10か所の全事業所を起点とするものと解せざるを得ず、従業員が現に関与していない事業所も含まれる点で過度に職業選択の自由を抑制するものであり、公序良俗に反し無効と判断した。限定解釈による一部有効の余地も、抑止的効果の観点から否定した。加えて、原告のマーブル事業(公費負担中心)と被告事業(全額自費)は事業構造が全く異なり、競業関係はゆうがく事業に限られること、被告らの待遇も広範な競業禁止を正当化する代償措置とはいえないことを指摘した。一方、被告らが在職中にウェブサイトを開設し、保護者にチラシを配布した行為は、雇用契約上の信義則に基づく競業避止義務に違反すると認定した。引継ぎ義務違反、テキスト等の横領・廃棄、営業秘密の不正使用についてはいずれも認められないとした。損害については、被告らの在職中の競業行為により生じた損害は、ゆうがくの児童1名に係る令和4年8月分の売上減少額1万5600円及び弁護士費用1560円の合計1万7160円に限られると認定し、原告の請求約1172万円に対し、ほぼ全額を棄却した。