AI概要
【事案の概要】 本件は、電子マネー送金方法及びそのシステムに関する特許(特許第6710820号、発明の名称「電子マネー送金方法およびそのシステム」)について、原告(PayPay株式会社)が被告(株式会社アイエスアイ)の有する本件特許の請求項1ないし14に係る発明についての無効審判請求を行ったところ、特許庁が請求不成立の審決をしたため、原告がその取消しを求めた審決取消訴訟である。原告は、(1)中国特許文献(甲1)を主引用例とする進歩性欠如、(2)国際公開公報(甲7)を主引用例とする進歩性欠如、(3)分割要件違反による新規性又は進歩性欠如、(4)本件補正による新規事項追加、(5)サポート要件違反の5つの無効理由を主張した。 【争点】 主たる争点は、本件各発明の「証明情報」の技術的意義の解釈と、それを前提とした甲1発明及び甲7発明に対する進歩性の有無である。具体的には、本件発明における「証明情報」が、ユーザ端末から発行要求を受けて管理サーバで作成されるデジタル署名や公開鍵等を有する電子証明書のような情報を意味するのか、それとも端末のID情報やパスワード等のより広い情報を含むのかが争われた。また、分割出願の適法性、補正による新規事項追加の有無、サポート要件充足性も争点となった。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、原告の請求を棄却した。裁判所は、本件発明の「証明情報」について、本件明細書等の記載を総合し、ユーザ端末から発行の要求を受けて管理サーバ又は電子証明書発行業者で作成される情報であり、認証のためのデジタル署名や公開鍵等を有する電子証明書のような利用者及び利用者端末を証明する情報であると認定した。この解釈を前提とすると、甲1発明の「サービスプロバイダのID情報」や「レジサービス端末の識別情報」はユーザ端末の情報そのものであって「証明情報」とは異なり、甲1発明からこのような証明情報を用いる構成を容易に想到できたとは認められないと判断した。甲7発明についても同様に、相違点2-3及び2-5に係る構成の容易想到性は認められないとした。分割要件違反、新規事項追加、サポート要件違反に関する取消事由についても、いずれも理由がないと判断し、本件審決に違法はないと結論づけた。