AI概要
【事案の概要】 本件は、電子マネー送金方法及びそのシステムに関する特許(特許第6306227号、発明の名称「電子マネー送金方法およびそのシステム」)の無効審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。原告(PayPay株式会社)が、被告(株式会社アイエスアイ)の保有する本件特許の請求項2ないし5に係る発明について、①中国特許文献(甲1)を主引用例とする進歩性欠如、②国際公開文献(甲7)を主引用例とする進歩性欠如、③分割要件違反による新規性・進歩性欠如、④サポート要件違反、⑤補正による新規事項追加の各無効理由を主張して審決の取消しを求めた。本件各発明は、送金側・受金側の各ユーザ端末と電子マネー管理サーバを用い、管理サーバで作成した電子証明書(デジタル署名・公開鍵等を有する「証明情報」)を端末認証に利用して電子マネーの送金を行う方法・システムに関するものである。 【争点】 主な争点は、(1)甲1発明(モバイル決済取引情報処理方法)との対比における「証明情報」に係る相違点の容易想到性、(2)甲7発明(モバイル決済処理方法)との対比における「第2の証明情報」に係る相違点の容易想到性、(3)請求項4・5を追加する本件補正が新規事項を追加するものか、(4)分割要件の充足性、(5)サポート要件違反の有無である。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、原告の請求を棄却した。取消事由1(甲1発明に基づく進歩性欠如)について、本件発明の「証明情報」はユーザ端末から発行要求を受けて管理サーバで作成されるデジタル署名・公開鍵等を有する電子証明書のような情報であるのに対し、甲1発明の「サービスプロバイダのID情報」等はユーザ情報そのものであって管理サーバで作成されるものではなく、両者は技術的意義が異なるとして、相違点1-2、1-3及び1-5に係る構成の容易想到性を否定した。取消事由2(甲7発明に基づく進歩性欠如)についても、甲7発明の「受取人口座番号」は電子証明書のような情報ではなく「第2の証明情報」に該当しないとして、相違点2-3及び2-5の容易想到性を否定した。取消事由3(新規事項追加)については、本件出願の当初明細書等の記載を総合すれば、請求項4・5の追加は新たな技術的事項を導入するものではないと判断した。取消事由4(分割要件違反)及び取消事由5(サポート要件違反)もいずれも理由がないとして、審決の判断に誤りはないと結論づけた。