AI概要
【事案の概要】 国立大学法人(被告)との間で5年以上にわたり委嘱契約を締結し、非常勤講師として英語や日本語教育等の授業を担当してきた原告ら4名が、令和4年4月1日に有期雇用契約を締結した上で、被告に対し、(1)上記委嘱契約は雇用契約であり、労働契約法18条1項に基づく無期転換申込みにより無期雇用契約が成立したとして地位確認、(2)令和4年4月以降の賃金額変更が労働条件の不利益変更(労契法9条)に当たり無効であるとして差額賃金の支払、(3)令和5年3月31日の雇止めが無期雇用契約の解雇に当たり無効であるなどとして賃金の支払を求めた事案である。 【争点】 主な争点は、(1)本件各委嘱契約が有期雇用契約に該当するか(原告らの労働者性)、(2)無期転換申込みにより無期雇用契約に転換したか、(3)賃金額変更が不利益変更に当たるか、(4)雇止めが労契法19条2号により無効かである。 【判旨】 裁判所は、原告らの請求をいずれも棄却した。労働者性の判断につき、使用従属性の有無を総合的に考慮する枠組みを示した上で、以下の事情から原告らは労働者に当たらないと判断した。まず、諾否の自由について、原告らは委嘱に係る授業以外の業務遂行を求められることが想定されておらず、有期雇用の特任講師とは異なり業務従事の指示に対する諾否の自由があることがうかがわれるとした。業務遂行上の指揮監督については、大学の授業は教授の自由が保障され授業担当者の裁量が広範であるという性質を有するところ、原告らはあらかじめ委嘱契約で定められた内容に従って業務を遂行するにとどまり、被告から具体的な指揮監督を受けることは想定されていないとした。勤務時間の拘束性についても、出退勤時刻の管理がなされておらず弱いと認定した。報酬については、時間給を基礎として算定されているとみる余地はあるものの、業務の性質上やむを得ない側面があるとして、直ちに労務対償性を肯定できないとした。さらに、原告らの報酬単価が特任講師の約2倍と高額であること、他大学でも授業を担当しており専属性が高くないことも労働者性を否定する方向に考慮した。以上から委嘱契約は雇用契約に当たらず、無期転換も成立しないとして、不利益変更及び雇止めに関する請求もいずれも理由がないとした。また、労契法19条2号の雇止め制限についても、通算契約期間の上限規程の存在や更新実績がないこと等から、更新の合理的期待は認められないとして退けた。