AI概要
【事案の概要】 フリージャーナリストである一審原告は、イラク・シリア等の紛争地域での取材活動を行っていたところ、シリアからトルコへ不法入国したことなどを理由にトルコ政府から5年間の入国禁止措置を受けた。一審原告が外務大臣に一般旅券の発給を申請したところ、旅券法13条1項1号(渡航先の法規により入国を認められない者)に該当するとして発給拒否処分を受けた。一審原告は、同処分の取消し、一般旅券の発給の義務付け(主位的に全地域、予備的にトルコ以外)、及び国家賠償を求めて提訴した。原審は取消請求のみ認容し、双方が控訴した。 【争点】 (1) 旅券法13条1項1号の合憲性及びその目的の解釈、(2) 本件旅券発給拒否処分における外務大臣の裁量権の逸脱・濫用の有無、(3) 一般旅券又は限定旅券の発給義務の有無、(4) 国家賠償請求の可否。 【判旨】 控訴審は双方の控訴をいずれも棄却した。旅券法13条1項1号の目的について、入国禁止措置を課した国と我が国との二国間の信頼関係の維持に加え、国際的な法秩序の維持や国際社会における我が国の信頼関係の維持にも資することを目的とすると解釈し、同号の規定自体は合憲であると判断した。その上で、外務大臣の裁量権行使の適法性については、入国禁止とされた経緯・理由、当該者の地位・経歴・渡航目的、渡航先の情勢、外交方針、国際情勢等の諸事情を総合考慮し、処分が合理的かつ必要やむを得ない限度のものかを審査すべきとの判断枠組みを示した。本件では、トルコ及び地理的近接国への渡航制限は合理的とする一方、イタリア・フランス等およそトルコとの信頼関係を損なうおそれのない国への渡航まで全面的に禁止する本件処分は、裁量権の逸脱・濫用に当たり違法であるとして取消しを認めた。他方、トルコ近接国への渡航制限の合理性から、全地域又はトルコ以外全地域を渡航先とする旅券の発給義務は認められず、国家賠償請求も棄却した。