AI概要
【事案の概要】 被告人は、令和5年12月1日午後5時43分頃、名古屋市内の路上において、徒歩で通行中の被害者(当時22歳)に対し、殺意をもって、その頭部等をバット様のもので背後から多数回殴打したが、被害者に逃走されたため、加療約1か月間の後頭骨骨折・急性硬膜外血腫の傷害を負わせたにとどまり、殺害の目的を遂げなかった殺人未遂の事案である。被告人は高校時代のいじめをきっかけに離人症を発症し、その後統合失調症も発症して幻聴が生じていた。幻聴の影響もあり、いじめの加害者であった同級生への怒りと憎しみを増幅させ、バットを準備して東京から深夜バスで名古屋に赴き待ち伏せしたが、偶然通りかかった無関係の被害者を同級生と取り違えて犯行に及んだものであった。 【判旨(量刑)】 裁判所は、犯行態様が危険で殺意も強く、被害者が死に至る危険もある重い傷害を負ったことから、実刑が相応しいとも考えられる事案であるとしつつも、以下の事情を考慮した。被告人の犯行は特定の同級生に対する怒りに基づくもので無差別・通り魔的犯行とは区別されること、統合失調症による幻聴等により怒りが増幅された面があること、被害者が被告人の病状を理解した上で謝罪を受け入れ治療と社会復帰を望む意向を示していること、被告人の両親が500万円を支払い示談が成立していること、被告人が保釈後に薬物治療を継続中であること、被告人自身が自らの問題を受け入れ治療に向き合う姿勢を示していること、前科がないことを挙げた。以上を踏まえ、刑の執行猶予を付して社会内更生の機会を与えることとし、犯行の重大性と再犯防止のため、法律上許される最長の刑期と猶予期間を定めた上で保護観察に付すこととした。検察官の求刑は懲役6年であったが、被告人を懲役3年・執行猶予5年・保護観察付きとした。