AI概要
【事案の概要】 本件は、「大勝軒」の文字を横書きしてなる登録商標(指定役務:中華料理の提供)について、原告(株式会社大勝軒、東池袋大勝軒の運営会社)が商標法50条1項に基づき不使用取消審判を請求したところ、特許庁が「審判の請求は成り立たない」との審決をしたため、原告がその取消しを求めた事案である。被告(有限会社大勝軒、横山町大勝軒の運営会社)は令和元年11月に解散し中華料理店も閉店していたが、審決は、同じ「人形町系大勝軒」グループに属する浅草橋大勝軒が被告から通常使用権の設定を受けた上で本件商標を使用していたと認定し、不使用取消しを否定していた。 【争点】 浅草橋大勝軒が本件商標の通常使用権者に該当するか否か。具体的には、被告と浅草橋大勝軒との間で通常使用権設定の合意(黙示又は口頭の合意)が成立していたといえるかが争われた。 【判旨】 裁判所は審決を取り消した。まず、通常使用権は商標権者の承諾を得れば移転でき、登録により対抗力を有するなどの権利性を有するから、黙示の設定合意の成立には、単なる使用の黙認にとどまらず、「権利の付与」に向けた明確かつ積極的な意思を客観的に確認できることが必要であるとの判断基準を示した。その上で、平成8年1月頃に被告側担当者が浅草橋大勝軒代表者に対し「大勝軒」の屋号を引き続き使用して差し支えない旨を口頭で伝えたやり取りについて検討し、被告側担当者は通常使用権の意味や設定契約の必要性をあまり理解しておらず、使用料の取決めも一切なく、相手方も法的意味を意識していなかったと認定した。さらに、被告側担当者の供述から、その目的は権利の創設的設定ではなく従前の屋号使用の継続確認にすぎなかったことは明らかであり、浅草橋大勝軒は継続的使用権(平成3年法律第65号附則3条1項)に基づき「大勝軒」商標を使用する権利を有していたから、客観的にも通常使用権の設定を受ける必要はなかったと判断した。以上から、浅草橋大勝軒は通常使用権者とは認められず、商標法50条2項の使用の証明がないとして、審決を取り消した。