AI概要
【事案の概要】 原告は内科医師であり、被告(一般財団法人大阪府結核予防会)に約28年間勤務し、診療所の副所長等を務めていた。原告は、画像診断の読影方法を体系化した論文(本件作品1)、診断過程をフローチャートで図示した作品(本件作品2)、及びシステムの画面レイアウト(本件作品3)を作成し、被告はこれらを基に外部業者(日立ソフト)に委託して医療用画像診断システム(本件システム)を開発・運用していた。原告は令和4年2月に退職した際、本件各作品及び本件システムの著作権が原告に帰属することの確認、被告による改変・複製等の差止め、及び本件システムの使用差止めを求めて提訴した。 【争点】 (1) 本件作品1〜3がそれぞれ著作物に該当するか、(2) 原告が本件作品3の著作者であるか、(3) 本件システムが原告の著作物に該当するか、(4) 職務著作の成否、(5) 著作権侵害又はそのおそれの有無、(6) 本件覚書違反の不法行為に基づく差止めの可否。 【判旨】 裁判所は、本件作品1(論文)については、医師としての経験に基づく画像診断の分析や提案が原告なりの表現で言語化されており、表現の選択に個性が現れているとして著作物性を認めた。また、被告が原告による文化庁への著作権登録を是認していたこと等から、職務著作の該当性にかかわらず原告が著作権等を有すると認定した。一方、本件作品2(フローチャート)は、一般的なフローチャート作成方法に従って図示したにすぎず創作性を欠くとし、本件作品3(画面レイアウト)も、画面サイズや必要情報から配置が自ずと定まるものであり創作性がないとして、いずれも著作物性を否定した。本件システムについては、実際に作成したのは日立ソフトであり、原告の主張はアイデアの保護を求めるものにすぎないとして、原告の著作者性を否定した。差止請求については、著作権侵害の態様が特定されていないこと、及び不法行為に基づく差止請求権は観念できないことを理由に退けた。本件覚書についても、原告退職後まで被告が改変に原告の承諾を得る義務を負うものではないと判断した。結論として、本件作品1の著作権及び著作者人格権の確認請求のみを認容し、その余の請求を全て棄却した。