発信者情報開示命令の申立てについての決定に対する異議の訴え事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告(動画制作・販売会社)は、氏名不詳者がファイル共有ソフトウェアBitTorrentを使用して被告の動画の複製データをアップロードし、著作権(送信可能化権・自動公衆送信権)を侵害したとして、プロバイダ責任制限法5条1項に基づき、電気通信事業者である原告(KDDI)に対して発信者情報の開示を求める申立てをした。東京地方裁判所がこの申立てを認容する決定をしたところ、原告が同法14条1項に基づき異議の訴えを提起した事案である。 【争点】 1. 権利侵害の明白性:BitTorrentでは著作物の複製物が「ピース」と呼ばれる細分化されたファイルに分解されて送信されるところ、個々のピース単体では再生できず著作物性がないとして、著作権侵害が明白といえるか。また、調査システムの正確性に疑義があるか。 2. 特定電気通信の該当性:BitTorrentによるピアとの1対1の通信が、プロバイダ責任制限法上の「特定電気通信」(不特定の者によって受信されることを目的とする通信)に該当するか。 【判旨】 裁判所は、原告の異議を退け、開示命令を認可した。 争点1について、発信者がBitTorrentを利用して著作物の複製物の一部であるピースを送信した場合、受信者はそのピースによって初めて複製物全体を再生できるのであるから、発信者は著作物全体の自動公衆送信の実現における枢要な行為をしているといえ、ピースの流通によって著作物全体の著作権侵害を直接的にもたらしていると判示した。したがって、送信された情報が著作物の複製物の一部のみを構成する場合でも著作権侵害は成立し、個々のピースについて表現の本質的特徴を直接感得できるかを論ずるまでもないとした。調査の正確性についても、システムの技術的説明は詳細かつ信用でき、意見照会の回答は客観的裏付けを欠く抽象的なものにすぎないとして、調査結果の信用性を認めた。 争点2について、BitTorrentの仕組みでは、発信者はトラッカーに接続して不特定の利用者からの求めに応じ自動的にファイルを送信しており、受信者は不特定の者に該当するから、本件通信は特定電気通信に該当すると判断した。通信の一部のみを取り出して1対1の通信であるとする原告の主張は、BitTorrentの仕組み全体を踏まえないものであり採用できないとした。