固定資産価格審査決定取消請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、広島市内に所在する地下2階・地上23階建ての複合構造家屋(SRC造・RC造とS造の混合)を所有する被上告人が、平成30年度の固定資産税の課税標準となる登録価格(約18億1744万円)を不服として、広島市固定資産評価審査委員会に審査の申出をしたところ棄却されたため、その審査決定の取消しを求めた事案である。本件家屋の既存部分は、登記簿上の合計床面積の約90%がS造、約10%がSRC造又はRC造であったが、広島市長は低層階(地下階)の構造であるSRC造等に応じた経年減点補正率を適用して価格を決定していた。被上告人は、最大床面積を占めるS造に応じた経年減点補正率を適用すべきであると主張した。 【争点】 複合構造家屋に対して固定資産評価基準に基づく経年減点補正率を適用する際、低層階を構成する構造(SRC造等)に応じた経年減点補正率を適用することが評価基準に反するか否か、また、床面積方式を定めた本件取扱要領との関係で平等原則に違反するか否かが争われた。 【判旨】 最高裁は原判決を破棄し、被上告人の控訴を棄却した。まず、評価基準には複合構造家屋に経年減点補正率をどのように適用するかについて具体的な定めがないことを確認した上で、経年減点補正率は構造耐力の減少や劣化等の物理的要因により定まる耐用年数を基礎として定められたものであるとした。そして、複合構造家屋であっても取壊しの判断は基本的に一棟単位でなされるところ、家屋に作用する荷重や外力は最終的に低層階の構造によって負担されることから、低層階の構造の耐用年数が経過しない限り建物としての効用の維持を図ることができるとして、低層階の構造に応じた経年減点補正率を適用することは評価基準上許容されると判断した。また、本件取扱要領は在来分家屋への床面積方式の適用について定めておらず、在来分家屋にまで一律に床面積方式を適用すべきとすれば評価事務に大きな負担が生ずることから、本件取扱要領の取扱いが不合理であるとはいえず、平等原則にも違反しないとした。 【補足意見】 草野耕一裁判官は反対意見を述べ、課税要件の明確性の観点から、固定資産税に係る法令の解釈は規定の文理に忠実であるべきとした。低層階方式について、その帰結はほとんど常に最長方式(納税者に最も不利な方式)と同じであり「ドラコニアン」な算定方式であると批判した。仮に適用範囲を限定した「穏やかな低層階方式」であっても、具体的な算定方式が一義的に定まらない以上、税務当局が事前に公表していなければ適法とはいえないとし、広島市長は算定方式を事前に公表していなかったことから本件登録価格の決定は違法であり、上告を棄却すべきであるとした。