AI概要
【事案の概要】 被告人は、金品を強奪する目的で、共犯者らと共謀の上、令和5年1月19日、東京都狛江市内の被害者A(当時90歳)方に宅配業者を装って侵入した。被告人らは、Aの両手を結束バンドで緊縛し、背部等を足で蹴り、腹部及び背部等をバールで多数回殴打するなどの暴行を加えて反抗を抑圧し、腕時計3個(時価合計約58万円相当)を強取した。Aは一連の暴行により多発肋骨骨折等の傷害を負い、外傷性ショックにより死亡した。本件は、秘匿性の高いメッセージアプリを通じて実行役を集め、指示役の指揮の下で組織的・計画的に敢行されたいわゆる「闇バイト」強盗事件である。 【争点】 被告人がAに対しバールを用いた暴行を加えたか否かが主たる争点となった。被告人は、犯行への関与自体は認めつつも、バールによる暴行は共犯者らが行ったものであり、自身はAに一切暴行を加えていないと主張した。これに対し検察官は、バールによる暴行を加えたのは被告人であると主張した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、共犯者甲及び丙の各公判供述について、被告人がバールでAを殴打した状況が具体的に述べられていること、甲の供述には自身に不利益な内容(被告人に暴行を指示したこと等)が含まれていること、司法解剖を担当した医師の所見(創傷の列序性や高エネルギーによる受傷)とも整合することから、基本的に信用できると判断した。弁護人が主張した共犯者間の口裏合わせの可能性については、甲の供述内容が自身の刑責軽減に繋がらないこと、SNSを通じて集められた関係に過ぎず口裏合わせの動機に乏しいことなどから退けた。他方、被告人の供述については、丙一人でAを緊縛できたとは考え難いこと、意識のないAをバールで叩くという犯行計画に沿わない暴行内容であること、医師の所見と矛盾する点があることなどから信用できないとした。 量刑については、組織性・計画性が際立つ極めて悪質な犯罪類型であること、被告人自身がAの死に直結したバールによる殴打を主体的に行い、身体に20か所以上の骨折を負わせるなど拷問ともいうべき残忍な犯行態様であること、金目当てで積極的に加担した利己的な動機に酌むべき事情がないこと、公判廷で虚偽の供述をし反省が認められないことなどを総合考慮し、検察官の求刑どおり無期懲役を言い渡した。