AI概要
【事案の概要】 元暴力団員である原告が、被告銀行(水戸支店)に対し、2度にわたり普通預金口座の開設を申し込んだところ、いずれも拒絶されたため、各拒絶は過去に暴力団員であったことを理由とする不当な差別であり人格権を侵害するとして、民法709条に基づき、各拒絶につき慰謝料10万円ずつ(合計20万円)及び遅延損害金の支払を求めた事案である。原告は平成29年6月に暴力団を離脱しており、茨城県警もその離脱を把握していた。被告は1回目の申込み時には行内の信用情報との照合により原告を暴力団構成員と判断して拒絶し、2回目の申込み時には、暴力団離脱者の口座開設支援策に基づくリスク低減措置として誓約書及び就労先との三者合意書の提出を条件としたが、就労先の労働者派遣法違反の疑いが払拭できないことを理由に拒絶した。 【争点】 1. 1回目の口座開設拒絶(本件拒絶1)の違法性及び過失の有無 2. 2回目の口座開設拒絶(本件拒絶2)の違法性の有無 【判旨】 請求棄却。裁判所は、本件各拒絶はいずれも原告が過去に暴力団員であったことを理由にされたものではなく、不法行為に該当しないと判断した。1回目の拒絶については、被告が行内の信用情報と照合した結果、原告を指定暴力団の構成員と確認して反社会的勢力の排除の要請に基づき行ったものであり、拒絶時点では原告が暴力団離脱者であることは明らかでなかったとして、違法性も過失もないとした。銀行法に公共性の規定があっても口座開設の応諾義務があるとは解されず、原告に暴力団離脱者か否かを説明させる法的義務もないとした。2回目の拒絶については、被告が設定した誓約書・三者合意書の提出条件は、政府の暴力団離脱者口座開設支援策や実務上提唱されたリスクベース・アプローチに沿った合理的なものであるとした上で、原告の就労先が労働者派遣法の許可を得ておらず同法違反の可能性が払拭できないこと、就労先との連携協力が得られないおそれがあることから、本件条件が充足されないと判断したことには合理性があるとして、違法性を否定した。