再審請求棄却決定に対する即時抗告棄却決定に対する特別抗告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 昭和54年10月、鹿児島県で発生した殺人・死体遺棄事件の第4次再審請求に対する特別抗告事件である。事件本人Aは、義弟Dを共犯者B(夫)及びCと共謀してタオルで頸部を絞めて殺害し、Cの長男Eと共に死体を牛小屋の堆肥中に埋没・遺棄したとして懲役10年の有罪判決が確定した。Aは一貫して犯行への関与を否認し、これまで3回の再審請求を行ったがいずれも棄却されていた。今回の第4次再審請求では、救急医療の専門家であるJ教授による死因鑑定、テキストマイニング手法によるK鑑定、供述心理学的手法によるL・M鑑定が新証拠として提出された。 【争点】 新証拠が刑訴法435条6号にいう「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」に当たるか否か。具体的には、J鑑定が示すDの死因(非閉塞性腸管虚血による腸管壊死)及び死亡時期(D方到着前に既に死亡)の信用性、並びにK鑑定・L・M鑑定によるF及びGの各供述の信用性評価が争われた。 【判旨】 最高裁第三小法廷は、裁判官宇賀克也の反対意見があるほか裁判官全員一致で、各特別抗告を棄却した。J鑑定については、死体の腐敗が著しく収集情報が極めて限定的であったこと、J教授が死体を直接検分しておらず写真という限定的情報から推論を重ねたものであること等から、証明力には限界があるとした。また、確定判決は死因特定が困難な中で客観的状況、共犯者の各自白、目撃供述等を併せて有罪認定したものであり、死因の一つの可能性を指摘するにとどまるJ鑑定によって直ちに合理的疑いが生じるとはいえないとした。K鑑定及びL・M鑑定についても、供述の信用性を直接判断するものではなく、可能性を指摘する位置付けにとどまるとして、各確定判決の認定に合理的疑いを抱かせるものとはいえないと判断した。 【補足意見(宇賀克也裁判官の反対意見)】 宇賀裁判官は、再審開始決定をすべきとする反対意見を述べた。J鑑定は臨床医・救急医療医の立場から新たな知見を提示するものであり高い信用性を有すること、殺人の唯一の直接証拠であったH旧鑑定(窒息死の推定)は既に撤回されており証明力がほぼ皆無であること、共犯者B・C・Eにはいずれも知的障害があり供述弱者として虚偽自白の可能性が高いこと、目撃者Iの供述にも重大な不自然さがあること等を詳細に指摘し、「疑わしいときは被告人の利益に」の鉄則に照らせば殺人の事実認定の正当性に合理的疑いが生じると論じた。
参照法条
刑訴法435条6号