AI概要
【事案の概要】 平成27年9月の台風18号による記録的豪雨(本件降雨)により、一級河川・鬼怒川の水位が上昇し、茨城県常総市内の若宮戸地区で溢水(本件溢水)、上三坂地区で堤防決壊(本件決壊)が発生し、広範囲に浸水被害が生じた。被災住民である一審原告らが、鬼怒川を管理する国(一審被告)に対し、国家賠償法2条1項に基づき損害賠償を求めた事案の控訴審である。一審原告らは、若宮戸地区では堤防の役割を果たしていた砂丘(本件砂丘)を河川区域に指定しなかったため太陽光発電事業者による掘削を防げなかったこと、上三坂地区では現況堤防高の低い箇所の整備を優先しなかった改修計画が格別不合理であることを主張した。原審は若宮戸地区についてのみ河川管理の瑕疵を認め、一部原告の請求を認容した。 【争点】 1. 若宮戸地区の本件砂丘を含む区域を河川区域に指定しなかったことが河川管理の瑕疵に当たるか 2. 若宮戸地区の堤防整備を優先しなかった改修計画が格別不合理か 3. 上三坂地区の堤防整備を優先しなかった改修計画が格別不合理か 4. 国が賠償すべき損害の範囲 【判旨】 控訴審は、原審の判断を一部変更した。争点1について、本件砂丘は鬼怒川の河川水の市街地への流入を防ぐ「山付堤」として実態的に堤防の役割を果たしており、河川法6条1項3号・河川法施行令1条1項1号の「地形上堤防が設置されているのと同一の状況を呈している土地」に該当し、河川区域として指定する要件を満たしていたと認定した。河川区域の指定には技術的・財政的・時間的制約がなく、長期間にわたり指定がされなかったことは河川管理の瑕疵に当たると判断した。国が主張した改修中河川に関する最高裁判例の枠組みについては、本件は河川区域の指定という堤防整備とは性質の異なる問題であり、直接適用されないとした。争点3の上三坂地区については、スライドダウン評価に基づく治水安全度の評価方法に合理性を認め、改修計画が格別不合理とはいえないとして瑕疵を否定した。損害の範囲については、若宮戸地区の一審原告らに限定し、上三坂地区・水海道地区の原告らについては本件溢水との因果関係を認めなかった。結論として、若宮戸地区の一部原告について損害額を認定し、原判決を変更した。