仮の差止めの申立て一部認容決定に対する抗告審の一部取消決定に対する許可抗告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 準特定地域(東京都特別区等)に営業所を有するタクシー事業者である相手方らが、公定幅運賃の変更により下限が引き上げられた後も、従前の運賃(旧公定幅運賃内だが新公定幅運賃の下限を下回る運賃)を届け出たため、関東運輸局長から特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法16条の4第3項に基づく運賃変更命令を受けるおそれがあるとして、行政事件訴訟法37条の5第2項に基づき運賃変更命令の仮の差止めを求めた事案である。原審は、公定幅運賃の変更に係る裁量権はタクシー事業者の営業上の利益保護の観点から制約を受けるとして、仮の差止めを一部認容した。 【争点】 公定幅運賃の変更に係る国土交通大臣等の裁量権の範囲として、個々のタクシー事業者の営業上の利益を保護する観点から、変更の程度や事業者への影響の程度等を考慮する義務があるか。 【判旨】 最高裁は原決定を破棄し、仮の差止めの申立てを却下した。特措法は、供給過剰のおそれがある地域において運賃値下げ競争を一時的に制限する趣旨で公定幅運賃制度を設けており、タクシー事業者が運賃設定につき一定の制約を受けることを当然に予定している。公定幅運賃の指定・変更に係る判断は国土交通大臣等の裁量に委ねられるが、同法が個々のタクシー事業者の営業上の利益を保護する観点から原審が指摘するような諸般の事情を考慮することまで求めているとは解されない。本件で用いられた総括原価方式は、当該地域の能率的な標準的事業者の費用及び適正な利潤に基づくものであり、不合理とはいえない。 【反対意見】 宇賀克也裁判官は、公定幅運賃制度は営業の自由を過度に制約しない解釈が求められるとし、予約送迎中心の営業形態で同業者との競争激化が想定されない相手方らに対し、従前の運賃を認めないことは制度趣旨を逸脱すると指摘した。また、タクシー供給不足が全国的に問題となる中、運賃変更命令を出すことは効果裁量の逸脱・濫用であり違法であるとして、仮の差止めを認めるべきとの反対意見を述べた。
裁判要旨
地方運輸局長が、特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法16条1項に基づき、同法3条の2第1項に基づき準特定地域に指定された地域における一般乗用旅客自動車運送事業に係る旅客の運賃の範囲を変更した場合において、概要、下記の設定方法により変更後の上記運賃の範囲を定めたなど判示の事情の下では、その下限の設定につき、上記変更の程度及び上記変更による一般乗用旅客自動車運送事業者への影響の程度を考慮していないことを理由として、上記変更が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した違法なものであると一応認められるとした原審の判断には、上記運賃の範囲の変更に係る裁量権に関する法令の解釈適用を誤った違法がある。 記 上記運賃の範囲の上限は、当該地域に営業所を有する一般乗用旅客自動車運送事業者のうち、小規模事業者、事故を多発している事業者、実働率の低い事業者等を除外して選定した能率的な経営を行う標準的な事業者の中から、所定の基準に従い抽出した事業者の一般乗用旅客自動車運送事業に係る費用及び適正な利潤を算出し、これと上記事業に係る運送収入が相償う運賃水準とする。 上記運賃の範囲の下限は、基本的には上記と同様の方法により算定するが、上記事業に係る費用の算出に当たり、燃料油脂費、車両償却費、役員報酬等の特定の費用項目については、上記各事業者が要した費用のうち、最も低い水準のものを用いる。 (反対意見がある。)
参照法条
特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法3条の2第1項、特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法16条1項、特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法16条の4第1項ないし第3項、特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法(令和5年法律第18号による改正前のもの)16条2項