所得税更正処分取消等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告(パチンコ店経営会社の代表取締役)は、平成27年から平成30年にかけて、米国・シンガポール・マカオのカジノ施設においてVIP顧客としてバカラを複数回行った。原告は、1〜2億円程度の信用枠(クレジット契約)を利用し、ローリングプログラム(VIP顧客向けサービス)のもとでバカラを行っていたが、バカラによる所得はないものとして各年分の所得税等の確定申告を行った。これに対し、税務署長は、予想が的中したゲームごとに配当として得たチップの額面相当額を収入とし、同ゲームに賭けたチップの額面相当額を控除して一時所得を算定すべきであるとして、各年分の更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分を行った。原告は、再調査の請求及び審査請求を経た上で、各処分の一部取消しを求めて提訴した。 【争点】 ①本件バカラ所得に係る「収入すべき金額」の捉え方(ゲームごとの配当か、プログラム終了時の精算残高か)、②米国カジノにおける1日20万ドルの換金制限が収入に影響するか、③一時所得の必要経費の範囲(的中ゲームに賭けたチップのみか、全ゲームに賭けたチップか)、④コミッション等に係る一時所得との内部通算の可否。 【判旨】 裁判所は、原告の請求をいずれも棄却した。争点①について、ライブチップは額面相当額での換金・ゲーム利用・債務充当が可能であり、額面相当額の経済的価値を有すると認定した。原告はプログラム終了まで換金できないと主張したが、裁判所は、換金制限はマネーロンダリング防止のための確認手続にすぎず、不正がない限り換金は妨げられないこと、原告自身が税務調査で任意終了可能と回答していたこと等から、各ゲームの予想的中時に権利が確定すると判断した。争点②について、換金制限は1日当たりの上限にすぎず、翌日以降の換金も可能であるから、経済的価値を否定するものではないとした。争点③について、所得税法34条2項の趣旨に照らし、収入と支出は個別対応的に計算すべきであり、予想が外れたゲームへの賭けは収入を発生させないから控除できないとした。争点④について、コミッション等は賭け金総額の最大0.95%にすぎず、チップを賭ける目的は客観的にみてバカラの配当を得ることにあるから、コミッション等を得るための支出とはいえないとして、内部通算を否定した。
裁判要旨
海外のカジノ施設においてカジノ行為の一種であるバカラのゲームを複数回行ったことにより所得(一時所得)を生じた場合につき、顧客は、チップを賭けて個別のゲームに参加し、予想が的中した場合には的中した内容に応じて一定額のチップを受け取ることができ、外れた場合には賭けたチップが没収されるところ、予想が的中した場合に得られるチップはその額面相当額について換金できるほか、新たなゲームに利用することができ、債務の返済に充当されることもあるから、その予想が的中した時点をもって、収入の原因となる権利が確定したものと解され、また、これに個別的に対応する支出は、当該ゲームに賭けたチップの額面相当額に限られるから、上記の場合における所得(一時所得)の金額は、予想が的中したゲームごとに、配当として得たチップの額面相当額(収入)から同ゲームに賭けたチップの額面相当額(支出)を控除して算定すべきであるとした事例