業務上横領、詐欺被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、大分県内の観光振興等を目的とする公益社団法人の経営管理部職員として、法人名義の預金口座の管理・入出金業務に従事していた。被告人は、平成29年6月から令和2年3月までの間、在職中に37回にわたり法人名義の普通預金口座から現金合計約2659万円を払い戻して着服横領した(業務上横領)。さらに、令和2年3月末に退職した後も、法人の銀行届出印が押捺された払戻請求書と預金通帳を使用し、払戻権限がないのにこれがあるかのように装い、同年5月から7月までの間に7回にわたり銀行窓口で合計604万円をだまし取った(詐欺)。被害総額は合計約3263万円に上る。被告人は会計ソフトへの虚偽仕訳の入力や二重計上・架空計上により、帳簿上の残高と実際の通帳残高を一致させる隠蔽工作を行っていた。 【争点】 弁護人は、本件の事件性(払戻しが正規の取引である可能性)、被告人の犯人性、故意の有無を争い、無罪を主張した。事件性については、証憑書類が破棄・隠匿された可能性や取引先供述の信用性を争った。犯人性については、被告人以外の法人職員が払戻しを実行し、被告人に罪を着せた可能性を主張した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、本件各払戻しについて証憑書類が存在せず現金が法人に還流した形跡もないことなどから、不正な払戻しであると認定した。犯人性については、会計ソフトへの不正な仕訳入力が被告人使用のパソコンや私用パソコンからなされていたこと、払戻し直後に近接した場所で被告人名義口座への入金がなされていたこと、被告人の日記帳に払戻金額等と一致する記載があったこと、被告人がFX取引で約3800万円の損失を出す一方で出所不明の約5400万円の入金があったことなどを総合し、犯人は被告人以外にあり得ないと認定した。他部署の職員や経営管理部の他の職員については、会計ソフトを用いた隠蔽工作を遂行する能力がなかったことなどから犯人である可能性を否定した。量刑については、会計ソフトの入力を中心的に担う立場を悪用した巧妙で背信性の高い犯行であること、3年余にわたる長期間の犯行であること、FX損失の埋め合わせという酌量の余地のない動機であることを指摘しつつ、前科がないことや健康状態への不安を考慮し、懲役4年(求刑懲役5年)を言い渡した。