AI概要
【事案の概要】 本件は、令和6年10月27日に施行された衆議院議員総選挙(小選挙区選出議員選挙)について、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県及び大分県の各選挙区の選挙人である原告らが、小選挙区選挙の定数配分及び選挙区割りに関する公職選挙法の規定が投票価値の平等を保障する憲法に違反し無効であるとして、各選挙区における選挙の無効を求めた事案である。本件選挙当日における選挙区間の選挙人数の最大較差は、最少の鳥取県第1区と最多の北海道3区との間で1対2.059であり、較差が2倍以上となっている選挙区は10選挙区であった。原告らは、令和4年の区画審改定案が作成時点で既に最大較差が1対2を超えていたことから新区画審設置法3条1項に違反すると主張するとともに、憲法が要請する1人1票等価値・人口比例選挙に反すると主張した。 【争点】 (1) 本件選挙時において、本件区割規定が定める選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態(違憲状態)に至っていたか。 (2) 仮に違憲状態であった場合、憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったか。 【判旨】 裁判所は、原告らの請求をいずれも棄却した。まず、判断枠組みとして、投票価値の平等は選挙制度の仕組みを決定する重要な基準であるが、国会が正当に考慮し得る他の政策的目的との関連において調和的に実現されるべきものであり、選挙制度の仕組みの決定について国会に広範な裁量が認められていると判示した。その上で、平成30年及び令和5年の各大法廷判決が示した新区割制度(アダムズ方式による10年ごとの定数配分等)の合理性を前提に、選挙区間の較差が憲法の投票価値の平等の要求と相いれない新たな要因によるものというべき事情や、較差の拡大の程度が制度の合理性を失わせるほど著しいものであるといった事情がない限り、違憲状態には至らないとの基準を適用した。本件選挙については、令和2年国勢調査の結果による最大較差は1対1.999であったところ、選挙当日の最大較差1対2.059への拡大は自然的な人口異動によるものであり、較差が2倍以上の選挙区数も令和3年選挙の29から10に減少していること等から、制度の合理性を失わせるほど著しいものとはいえないと判断した。また、原告らの新区画審設置法3条1項違反の主張については、同条にいう「人口」とは国勢調査の結果に基づく人口を指すものであり改定案作成日の人口ではないこと、同法は改定案作成時から次の国勢調査までの全期間について較差2倍未満を求めるものではないことを指摘して退けた。さらに、憲法が1人1票等価値・人口比例選挙を当然に要請しているとは認められないとして、原告らの主張を全て排斥した。