AI概要
【事案の概要】 被告人は、令和3年12月19日午後11時頃から約50分間にわたり、茨城県かすみがうら市内の居酒屋において、約30年来の知人である被害者(当時57歳)に対し、顔面を拳で複数回殴り、胸部付近を足で複数回蹴り、さらに胸ぐら付近を両手でつかんで立たせた上、手を離すなどして転倒させるなどの暴行を加えた。被害者は身体障害の影響もあり無抵抗であったが、被告人は店員や他の客から制止されながらも断続的に暴行を繰り返した。被害者は外傷性急性硬膜下血腫等の傷害を負い、翌20日午前7時37分頃、搬送先の病院で脳ヘルニアにより死亡した。 【争点】 本件では、(1)被告人が起訴事実どおりの暴行を加えたか、(2)被害者は被告人の暴行によって死亡したか、の2点が争われた。被告人は、被害者の顔を1回殴った記憶はあるがそれ以外の暴行の記憶はないと供述し、弁護人は、被害者が自宅駐車場で自ら転倒して死亡した可能性や、第三者からの暴行の可能性を主張した。弁護側の法医学医は、後頭部挫創と同じ衝撃で外傷性急性硬膜下血腫が生じたとして、駐車場での転倒が死因である可能性を指摘した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、暴行を目撃した店経営者の供述について、当時の状況を具体的に述べており、被害者の遺体に残された鼻骨骨折や多発性皮下出血等の所見、店内の壁の破損や血痕、被告人の着衣の血痕等の客観的証拠とも整合するとして信用性を認め、争点(1)について起訴事実どおりの暴行を認定した。争点(2)については、血腫内と大腿静脈内の血中アルコール濃度の差から推定される受傷時刻が居酒屋での暴行の時間帯と一致すること、退店時に被害者が自力歩行困難となり意識障害の兆候を示していたこと等から、居酒屋での被告人の暴行により外傷性急性硬膜下血腫が生じたと認定した。自宅駐車場での転倒については、むしろ既に生じていた意識障害が原因であると判断した。量刑については、同種事案の量刑傾向(懲役2年から11年、中間値6年)を踏まえ、無抵抗の被害者に対する約50分間の執拗な暴行であること、犯行動機が判然とせず被害者に落ち度がないこと、被告人が自らの罪に十分向き合えていないことを考慮し、求刑懲役8年に対し、懲役7年を言い渡した。