AI概要
【事案の概要】 本件は、発明の名称を「車両誘導システム」とする特許第6159845号の特許権者である原告(コンピュータソフトウェアの設計・製造等を業とする有限会社)が、高速道路の管理事業等を業とする被告(中日本高速道路株式会社)に対し、被告が設置・使用するスマートインターチェンジ(SIC)のETC設備(双葉SIC、梓川SIC、湖東三山SIC、愛鷹SIC、三方原SICの計5箇所に設置された各システム)が本件特許の請求項1及び2に係る各発明の技術的範囲に属し、被告による当該各システムの使用が本件各発明の実施に当たると主張して、民法709条に基づき、特許法102条3項により算定された実施料相当額の損害賠償として6億6860万5594円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。本件特許は、ETC車専用出入口から出入りする車両を、ETC処理の可否に応じて異なるレーンへ誘導する車両誘導システムに関するものであり、原告代表者が平成16年に出願した親出願から6世代にわたる分割出願を経て平成29年に設定登録されたものである。 【争点】 (1) 被告各システムが本件発明1の技術的範囲に属するか(構成要件A~Jの充足性) (2) 被告各システムが本件発明2の技術的範囲に属するか(構成要件Kの充足性) (3) 原告の請求が信義則違反ないし権利濫用に当たるか (4) 損害の発生及び額(実施料率、売上額の算定方法等) 【判旨】 裁判所は、被告各システムが本件発明1及び2の全構成要件を充足し、その技術的範囲に属すると判断した。構成要件Aについては、「ETC車専用出入口から出入りをする車両を誘導するシステム」にはETC処理が不可能な車両の誘導も含まれるとし、出願時の請求項4が削除された経緯をもって当該誘導が排除されたとする被告の主張を退けた。構成要件B・C・F・G・H・Iについても、被告各システムの車両検知器や発進制御機の構成・動作が各要件を充足すると認定した。信義則違反ないし権利濫用の主張については、被告の事業に公益性があるとしても、他人の特許権を侵害する場合に実施料相当額の支払義務を否定する根拠にはならないとして排斥した。損害額の算定では、特許法102条3項に基づき、被告各SICの通行台数に車両1台当たりの売上額(ターミナルチャージ75円と隣接IC間の通行料金の合計)を乗じた売上額に実施料率2%を適用し、消費税及び弁護士費用相当額を加算して、損害額合計2億6744万2241円及び令和4年9月30日からの年3%の遅延損害金を認容した。被告が主張した設備工事費用に基づく算定方法は、被告が株式会社として通行料金により収益を上げていることや、被告提出の実施許諾契約書がいずれも被告自身が特許権者として許諾する内容のものにすぎないことから、採用しなかった。