港湾施設工事差止請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、種子島漁業協同組合(種子島漁協)の組合員である原告が、被告(国・防衛省)が鹿児島県西之表市に属する馬毛島において進めている自衛隊施設(馬毛島基地)の整備事業の一環として、その周辺海域で行っている港湾施設整備工事について、原告の漁業法上の組合員行使権又は慣習的漁業権が侵害され、又は侵害されるおそれがあるとして、これらの権利に基づく妨害排除請求及び妨害予防請求として、漁業権の消滅区域及び制限区域における工事の差止めを求めた事案である。種子島漁協は令和5年2月の臨時組合員総会において、消滅区域における一切の漁業権を放棄し、制限区域において57か月間全ての操業を行わないことを決議し、被告との間で補償金合計約22億円の支払を内容とする合意を締結していた。原告はこの総会決議が違法無効であると主張するとともに、共同漁業権とは別に慣習的漁業権が存続していると主張した。 【争点】 1. 種子島漁協が消滅区域等における制約のない共同漁業権を有しており、原告が同区域における組合員行使権を有しているか(総会決議の有効性を含む) 2. 原告が消滅区域等で排他性を有する慣習的漁業権を有しているか 3. 原告の組合員行使権又は慣習的漁業権に対する侵害の有無及び工事差止めの必要性 【判旨】 裁判所は、原告の請求を棄却した。争点1について、共同漁業権は都道府県知事の免許によって創設的に設定される権利であり、平成25年共同漁業権は存続期間の満了により消滅し、令和5年免許において漁場の区域に消滅区域が含まれていない以上、総会決議の無効によって直ちに漁場の区域に消滅区域が含まれるとは解し難いとした。また、平成元年最高裁判決を引用し、共同漁業権は法人である漁協に帰属し、組合員行使権は社員権的権利にとどまると判示した上で、共同漁業権の放棄及び制限は水産業協同組合法50条4号の特別決議事項に該当し、総会の特別決議によって行うことができるとした。漁業権行使規約の「管理」に漁業権の放棄や制限は含まれないとも判断し、総会決議は違法無効とはいえないとした。制限区域についても、有効な総会決議に基づく合意により、原告は被告に対して組合員行使権を主張・行使できないとした。争点2について、新漁業法の制定は水面の計画的総合利用による漁業生産力の発展を図る趣旨に基づくものであり、漁業法施行法1条1項により消滅する既存の漁業権には慣習上の漁業権も含まれるとして、仮に慣習的漁業権が存在したとしても新漁業法施行から2年の経過をもって消滅したと判断した。新漁業法制定後の漁業活動の継続による新たな慣習的漁業権の取得についても、海は公共用物であり排他的支配が許されないこと、漁業法が共同漁業権と抵触する慣習的漁業権の発生を許容しているとは考えにくいことから、これを否定した。