AI概要
【事案の概要】 被告人は、令和6年8月9日、名古屋市内の独立行政法人病院において、入院中の母親が受けていた点滴治療に対し、偽計業務妨害行為に及んだ事案である。被告人は、以前から母親に摂取させていた加工食品(サプリメント)について、入院後も摂取させたいと考えていたが、主治医らから何度も摂取は認められないと説明を受けていた。それにもかかわらず、被告人は病院関係者に見つからないよう、事前に注射器等を用意して病室に持ち込み、母親の点滴輸液ボトルにサプリメントを溶かした水溶液を注入した。この行為により、医師による点滴輸液ボトルを用いた適切な医療行為の継続が困難となり、医師や看護師らは点滴輸液ボトルの交換や輸液の培養検査等の本来不要な業務を余儀なくされ、正常な業務の遂行に支障が生じた。 【判旨(量刑)】 裁判所は、本件犯行について、注射器等を事前に準備し病院に持ち込んだ計画的かつ悪質な犯行であると指摘した。医師や看護師らの通常業務に与えた影響も小さくないと評価した。一方で、被告人がひとりで母親の面倒をみていたこと、サプリメントの販売元から送付された資料には免疫や遺伝子の活性化効果を謳う説明や多数の体験談が記載されており、これらを信じて母親にも効果があると考えたこと自体は強く非難できないとした。もっとも、主治医らの制止を無視し、病院関係者への迷惑を深く考えずに自らの判断で注入行為に及んだ点は非難を免れないとしつつ、母親の病気を治したいという思いからの行動であった点はある程度斟酌すべき事情であるとした。さらに、被告人が事実を認めて謝罪の言葉を述べていること、病院に謝罪文を送付し被害弁償の申入れもしていること、前科はあるものの直近のものは罪種が異なる罰金前科であり、それ以外は10年以上前に刑の執行を終えたものであることを考慮し、求刑懲役2年6月に対し、懲役1年6月・執行猶予3年を言い渡した(未決勾留日数40日算入)。