AI概要
【事案の概要】 被告人(昭和21年生まれ)は、最重度の知的障害等を抱える二男A(当時44歳)を妻と共に長年にわたり自宅で養育・介護してきた。Aは言葉による意思疎通ができず、度々暴れてふすまや電化製品を壊すなどの行動があり、障害者支援施設の介護職員でさえ支援に困難を感じるほどであった。被告人は県立支援施設への長期入所を繰り返し申し込み、限界に来ていることや「このままではAを殺してしまうかもしれない」とまで訴えたが、長期入所はかなわず、精神病院からも入院を断られるようになり、他の施設にも空きがなく断られ続けた。令和2年には妻が包丁を持ち出して一家心中すると叫ぶほど追い詰められていた。令和6年5月、近隣への迷惑を避けるため転居したが、Aが暴れる頻度は日に日に増し、同年7月4日も激しく暴れた。被告人は、高齢の自分たちが倒れればAの面倒をみる人がいないと将来を悲観し、長く続く限界状態からの解放やAが自傷で血だらけになる姿を見たくないとの思いから、とっさにAを殺害することを決意。うつ伏せのAの背中にまたがり、テレビアンテナコードを頸部に二重に巻き付けて締め付け、窒息死させた。犯行後直ちに110番通報し自首した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、人の命が奪われた結果は重大であり、いかなる理由であれ殺害を選択した被告人は非難されるべきとしつつも、被告人が長年にわたり献身的に被害者を介護してきた経緯を詳細に認定した。被告人は暴れる被害者への対応を担い、妻を守り、朝晩長時間のドライブに連れ出し、睡眠時間を削って見守るなど愛情を注いできた。幾度も支援施設に限界を訴えながらも長期入所を断られ、他の施設や病院からも十分な支援が得られず、被告人にとっては絶望的な状況であったと認定した。転居先の村の担当職員からも支援施設を見つけるのは難しいと言われており、訪問介護も被害者の障害特性や金銭的理由から選択肢に入らなかった。裁判所は、被告人がかなり追い詰められた状況で犯行に及んだものであり、非難の度合いは強くなく、犯行経緯には酌むべきところが多いとした。犯行直後の自首、保釈後の墓参と反省の深まり、妻や実弟らの支援の誓約も考慮し、被害者への贖罪と供養は社会内で行わせるのが相当と判断した。求刑懲役5年に対し、懲役3年・執行猶予5年を言い渡した。