AI概要
【事案の概要】 本件は、原告(大和ハウス工業株式会社)が、被告(Next Innovation合同会社)の保有する「弾塑性履歴型ダンパ」に関する特許(特許第5667716号)について特許無効審判を請求したところ、特許庁が請求不成立の審決をしたため、その取消しを求めた審決取消請求事件である。被告は、建物等に適用される弾塑性履歴型ダンパに関し、互いの向きを異ならせて連結部を介して一連に設けられた板状の一対の剪断部を備え、第一補強部と剪断部とのなす角が鋭角となるように形成された構成を特徴とする特許を有していた。原告は、甲1発明(せん断型エネルギー吸収部材)を主引用発明とする進歩性欠如、甲12発明(波形耐震部材)との新規性欠如又は進歩性欠如、及びサポート要件違反の3つの取消事由を主張した。 【争点】 (1) 取消事由1:甲1発明を主引用発明とし、甲2(せん断パネル型ダンパーの複数方向配置)に記載された構成等に基づく進歩性欠如の有無。特に、甲1発明の2枚の金属薄板の向きを異ならせる構成(相違点1)が容易想到か。(2) 取消事由2:甲12発明(波形鋼板を用いた波形耐震部材)との新規性欠如又は甲13技術事項に基づく進歩性欠如の有無。特に、本件訂正発明の「板状の一対の剪断部」が波形鋼板を含むか(相違点A-1の認定)、及び波形鋼板とフランジのなす角が鋭角となる構成の開示の有無(相違点A-2の認定)。(3) 取消事由3:本件訂正発明が「入力により荷重を受けたときに変形してエネルギー吸収を行う」と機能的に特定している点についてのサポート要件違反の有無。 【判旨】 裁判所は、原告の請求を棄却した。取消事由1について、甲1発明は建築物の架構の構面に沿った一方向からの荷重入力を前提とするものであり、橋梁等の二次元的な動きに対応するための甲2発明の複数方向配置を適用する動機付けがないと判断した。また、甲1発明の金属薄板の向きを異ならせると、少なくとも一方は荷重が面内方向に入力されない配置となり、阻害要因があるとした。取消事由2について、請求項2の「前記剪断部」は請求項1の「一対の剪断部」のうちの一つを指すものであり、二対以上の剪断部を含むとする原告の解釈は誤りであるとして、相違点A-1の認定に誤りはないとした。甲13技術事項の「窪み」を一つとする構成は平板状の部分に凹みが一つある構成にとどまり、相違点A-1に係る構成の開示があるとはいえないと判断した。取消事由3について、本件訂正発明は全方向からの最大限のエネルギー吸収を求めるものではなく、複数方向からの振動吸収という課題を解決できると当業者が認識できるとして、サポート要件違反はないと結論付けた。