恐喝未遂、恐喝、暴行、重過失致死
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、交際相手の連れ子である被害児童(当時4歳)と同居していたところ、令和元年8月27日、被害児童の頭部を右拳で1回殴る暴行を加えた(暴行罪)。翌28日、被害児童は朝から38.5℃の高熱があり、自分で歩けないほどぐったりしていた。母親が小児科を受診させたところ、血中ヘモグロビンが8.8g/dlと中程度の貧血状態にあり、精密な血液検査が行われた。被告人は被害児童の著しい体調不良を認識していたにもかかわらず、同日午後7時40分頃から約1時間にわたり浴槽内で入浴させた際、約15分間脛毛を剃ることに集中するなどして被害児童の動静を注視せず、少なくとも約4分間にわたり鼻口が水没した状態を看過し、被害児童を溺死させた(重過失致死罪)。さらに被告人は、令和2年4月、知人DがSNSに被告人に関する投稿をしたことを口実に、共犯者と共謀してDに暴行を加えた上で金銭を要求したが支払われず(恐喝未遂)、その後Dの交際相手Gに対し畏怖に乗じて合計46万円を脅し取った(恐喝2件)。 【争点】 第一に、暴行罪について弁護人はしつけの範囲内であり不法な有形力の行使に当たらないと主張した。第二に、重過失致死罪について、弁護人は被害児童の死についての予見可能性がなく、仮に過失があっても重過失には当たらないと主張した。具体的には、意識消失の原因であるクモ膜下出血の発症を想定できなければ予見可能性がないこと、当日診察した小児科医も重篤な状態とは認識しておらず医学的知見のない被告人に予見は不可能であること等を主張した。第三に、恐喝事件について、弁護人は恐喝行為・故意・共謀のいずれも否定し、捜査手続の違法による証拠排除と公訴権濫用も主張した。 【判旨(量刑)】 裁判所は全ての争点について弁護人の主張を退けた。暴行罪については、4歳児に対し成人男性が拳で頭部を殴る行為は社会通念上不法な有形力の行使に当たるとした。重過失致死罪については、被害児童の体調が解熱剤では回復し得ないものであったとする法医学者の鑑定を信用し、被害児童が夕方に回復していたとする被告人及び母親の公判供述を排斥した。その上で、高熱でぐったりした児童を長時間入浴させればのぼせ等により溺水する危険があることは基本的な社会常識として容易に予見可能であり、クモ膜下出血の認識は不要であるとした。結果回避も被害児童の動静を注視すれば足りたのに約4分間も鼻口水没を看過した注意義務違反は甚だしいとして重過失を認定した。恐喝事件については、被害者らの供述の信用性を認め、捜査手続の違法についても令状主義の精神を没却する重大な違法はないとした。求刑懲役3年6月に対し、懲役2年6月(未決勾留日数250日算入)を言い渡した。