AI概要
【事案の概要】 被告人は、A株式会社の経理責任者として経理業務全般を統括し、同社名義の預金管理等の業務に従事していた者である。被告人は、長男である分離前相被告人Bと共謀の上、長野県駒ヶ根市所在の株式会社C銀行D支店に開設されたA株式会社名義の普通預金口座の預金を業務上預り保管中、合計8回にわたり、同口座から長男の指定する口座に合計9億0490万3115円を振替入金して横領した。被告人は、犯行期間中、総勘定元帳に虚偽の記載をするなどして巧妙に発覚を免れていた。なお、被告人自身は本件犯行により経済的な利得を得ておらず、横領金は全て長男に渡っていた。検察官は懲役13年を求刑した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被告人を懲役10年に処した(未決勾留日数中280日を算入)。量刑の理由として、裁判所はまず、被告人が経理責任者として被害会社の預金を管理する重要な地位にありながら、数年間にわたって9億円を超える巨額な金銭を横領したこと、総勘定元帳の虚偽記載により巧妙に犯行の発覚を免れていたことを指摘し、被害会社に与えた被害が甚大であること及び委託信任関係が著しく破壊されたことを最も重視すべきとした。被告人が経済的利得を得ていない点は認めつつも、長男からの度重なる懇請を毅然と拒絶すべき職責を有していながら唯々諾々と要求に応じ、経理責任者という犯行実現に不可欠な地位を利用して長男に不正な利益を得させたとして、長男と共に重要な役割を果たしたと評価した。弁護人の「被告人は長男に騙されて返済を受けられると誤信していた」との主張については、上場企業の経理責任者として財務状況を確認すべき客観的資料を熟知していたはずであるにもかかわらず長男からそのような資料を何ら徴求していないとして退けた。一般情状として、長男による被害の一部回復、被告人の財産の仮差押えによる多少の被害回復の可能性、懲戒解雇の事実、前科前歴がないことを有利な事情とする一方、罪体の重要部分について不合理な弁解をし真摯な謝罪や反省の態度を示していないことを不利な事情として考慮した。