AI概要
【事案の概要】 被告人は、平成28年9月頃、当時生後約4か月の実子Aに対し、両腕の上腕部及び前腕部の計4か所にかみつく暴行を加え、それぞれ全治約2週間の皮下出血の傷害を負わせた(傷害事件)。さらに約6年後の令和4年5月14日、当時生後約8か月(早産のため発達は生後約6か月相当)の実子Bに対し、何らかの方法でその胸腹部を強い力で圧迫し、肝破裂により死亡させた(殺人事件)。被告人は当時、周囲に頼れる人がいない中で双子を一人で育てており、育児ストレスにさらされていた。なお、被告人は殺人事件の数年前にも、Aへの身体的虐待により二度にわたり児童相談所等にAが保護され、最終的に児童養護施設入所となった経験があった。 【争点】 殺人事件における主な争点は、被告人の殺意の有無である。その前提として、肝破裂の原因となった暴行の態様も争われた。弁護人は、被告人がBの腹部を2回殴打したに過ぎず殺意はなかったと主張し、傷害致死罪の成立にとどまると主張した。これに対し裁判所は、解剖医の証言に基づき、Bの肝臓が脊椎に押し付けられて挫滅に至った損傷態様や、腹部に皮下出血がないこと、腸間膜損傷が生じていること等から、瞬間的な打撃ではなく一定時間の強い力による圧迫行為であったと認定した。そして、このような圧迫行為は乳児が死亡する危険性が極めて高いものであり、被告人もその危険性を認識しながらあえて行為に及んだとして、未必の殺意を認めた。被告人が犯行後にスマートフォンで無関係な検索をしていた点や119番通報した点についても、衝動的犯行後に一時的に気を逸らした後に通報したと解釈でき、殺意の認定を妨げないとした。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被告人を懲役12年に処した(求刑懲役13年)。量刑理由として、乳児の肝臓が挫滅に至るほどの圧迫行為は凶器を用いた暴行に勝るとも劣らない残虐なものであること、犯行前の約2か月間にも複数回の暴行が認められ常習的虐待の中での犯行であること、被告人が過去のAへの虐待経験から自己の傾向を認識すべきであったにもかかわらず行政支援を自ら拒絶し育児ストレスを抱え込む環境を招いたこと、法廷でも「もう一人の自分」がしたなどと責任を逃れる弁解に終始し真摯な反省がみられないことを指摘し、同種事案の中でも重い部類に属すると判断した。