AI概要
【事案の概要】 本件は、滋賀県野洲市所在のグループホームにおいて介護職員として勤務していた被告人が、2回にわたり、夜勤中に高齢の入居者2名に対して暴行を加え、傷害を負わせたという事案である。第1の事実として、令和4年11月30日午後6時30分頃から翌日午前8時頃までの間に、当時92歳の被害者Bに対し何らかの暴行を加え、加療約1か月間を要する顔面打撲及び急性硬膜下血腫の傷害を負わせた。第2の事実として、令和5年5月18日午後7時頃から翌日午前7時30分頃までの間に、当時89歳の被害者Cに対し何らかの暴行を加え、加療約6週間を要する右上口唇上部挫傷、胸部挫傷、右第3肋骨骨折、胸骨骨折、右尺骨遠位端骨折及び右肩関節脱臼の傷害を負わせた。被告人はいずれの犯行も否認し、弁護人は事件性及び犯人性を争った。 【争点】 主な争点は、(1)被害者らの負傷が他者の暴力によるものか(事件性)、(2)仮に事件性が認められるとしても被告人が犯人か(犯人性)の2点である。弁護側は、被害者らの負傷は転倒や介助行為で生じた可能性があると主張し、弁護側証人の臨床医も事件性を否定する意見を述べた。これに対し、裁判所は、法医学の専門家であるD医師の供述に基づき、損傷の形状・分布・外力の方向等から転倒等では説明できないとして事件性を認定した。犯人性については、施設の施錠状況、夜間の出入りの困難さ、入居者の身体機能の制限、各フロアの夜勤体制等から、犯行が可能であった者は被告人のみであると認定した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被告人を懲役3年の実刑に処した(求刑懲役4年)。量刑理由として、介護職員として入居者の生命・身体の安全を守るべき立場にありながら、夜勤で他の職員がいない状況を利用し、身体や認知機能の低下により抵抗や被害の訴えが困難な高齢者に対してあえて犯行に及んだ点を卑劣と評価し、傷害事案の中でも悪質な部類に属するとした。被害者らの負った傷害も相応に重く、被害結果は重大であるとした。さらに、被告人が犯行を否認して不合理な弁解に終始し、反省の態度が皆無であることを不利な情状として考慮した。他方、被告人に前科がないことを有利な事情として考慮し、未決勾留日数中300日を刑に算入した。