AI概要
【事案の概要】 船舶管理会社の従業員F(当時30歳)が、上司である被告Dらの下で船舶管理業務に従事していたところ、平成31年4月に自殺した。Fの父母である原告らが、自殺の原因は過重な業務や上司によるパワーハラスメントに起因する精神障害であるとして、被告会社、代表取締役である被告C、上司である被告D及び被告Eに対し、不法行為・使用者責任・安全配慮義務違反・会社法429条1項等に基づく損害賠償を求めた事案である。Fは英語が不得意であったにもかかわらず、英語を用いる入渠仕様書や見積比較表の作成業務を命じられ、いずれも期限を徒過する状況にあった。 【争点】 主な争点は、(1)Fの自殺が業務に起因するか、(2)被告らの責任原因の有無、(3)損害額、(4)過失相殺・素因減額の可否であった。被告らは、業務は過重でなく、メールによる指導も業務上必要かつ相当であり、精神障害の発症についての予見可能性がなかったと主張した。 【判旨】 裁判所は、Fの死亡前1か月の時間外労働が少なくとも43時間29分に上り、不得意な英語を用いる不慣れな業務に苦慮する中で業務負担が増加したことに加え、被告Dが「手抜きにも程があります」「ナマケモノの態度を改めなければあなたを必要とする理由が見当たりません」等の社会的相当性を欠くメールを送信したことにより、Fに相当程度の心理的負荷が生じたと認定した。これらの業務上の心理的負荷は自殺を惹起させうる精神障害を発症させる程度に過重であったと評価し、業務起因性を認めた。被告会社については、客観的な労働時間を把握せず業務量の調整措置を採らなかった安全配慮義務違反を認定した。被告Dについては、業務量の調整義務を怠り不適切なメールを送信した不法行為責任を認めた。一方、被告Cについては現実にFの選任・監督を担当しておらず使用者責任を負わないとし、会社法429条1項の重過失にも当たらないとして責任を否定した。被告Eについても不法行為責任を否定した。過失相殺・素因減額も認めず、被告会社及び被告Dに対し、原告父に約2698万円、原告母に約3914万円の連帯支払を命じた。